■ 互いにゆずらぬ両雄
 最近の大川橋蔵の人気は凄い。消息通によると最近の橋蔵の人気には先輩錦之助の塁をますものがあるといわれている。まことに躍進目ざましい橋蔵である。

 一方市川雷蔵は、正直にいって普遍的な人気の点では橋蔵に一歩をゆずる。しかしそれは、この二人のホーム・グランドである東映・大映両社作品の持つ観客動員数のヒラキに原因しているといえるし、もし雷蔵が東映スターで娯楽価値豊かな同社作品にジャンジャン出ていたとしたら、ファンの数も橋蔵を上回ることになっていたかもしれない。

 雷蔵は人気の点で橋蔵に一歩ゆずるとしても、三十三年度には『炎上』の好演でブルー・リボン演技賞に輝き、橋蔵のように娯楽時代劇一点張りでなく、意欲的な現代劇にも積極的な熱意を示して演技派時代劇スターとしてその前途に多大の期待をかけられる点では現在の橋蔵には見られない大きな長所を持っている。

 だから、この二人は一方でヒケをとっても一方では相手を食うといった風に、互いに相ゆずらぬものがある。