まず、以下の日本経済新聞・春秋の切り抜きを読んでください

「世の中はだんだん春めいて人の心も浮き浮きとしてくるというこのシーズンも、税金のことを思えば浮き浮きしないことおびただしいものがあります」。三十七歳の若さでこの世を去った俳優市川雷蔵が確定申告について珍しい文章を残している。(雷蔵、雷蔵を語る)

▼「眠狂四郎」や「忍びの者」などの映画で鮮烈な演技をみせた雷蔵がこんな思いを抱いていたとは意外だった。さっそうとした姿からは想像しにくい。しかし読んでいくうちに気持ちが伝わってくる。大企業とちがって「自分一人の顔や頭や手や足そのものが資本」と雷蔵はいう。身を削るように演技に打ち込んだだけに、高い税金にははがゆい思いがしたのだろう。

▼三十六年前に書かれたこの文章は今かえって新鮮だ。雷蔵のような高額所得者でなくても、税金とは何かを考えざるをえなくなっている。住専問題は国民の納税意識をめざめさせた。「こんな思いをして多額の税金を納めているのに、現在の政治を考えてみるとまったくいやになってしまいます」。この言葉に共感する人は多いだろう。

▼もちろん雷蔵は税金に拒否反応ばかり示していたわけではない。それどころか、高額の税金を納めることは「国家に貢献していることになる」と考えていた。だからこそ雷蔵は訴える。「為政者はもっと考えて大切にわれわれの税金を使ってほしいと思います」。

雷蔵が一人の日本国民として、真摯に生きていた証のような文章です。その上、自由国民社の発行する「ニッポン風俗・芸能グラフティ」という『現代用語の基礎知識』2003・別冊付録のなかの高額所得者番付に雷蔵の名前を見つけました。

1962(昭和37)年高額所得番付

(文学・芸術・芸能)(単位:10万円)

【映画俳優】@大川橋蔵268A森繁久彌252B片岡千恵蔵178C三船敏郎165D大友柳太朗163E長谷川一夫158F市川右太衛門156G市川雷蔵146H伴淳三郎137I淡島千景129

1963(昭和38)年高額所得番付

(文学・芸術・芸能)(単位:万円)

【映画俳優】@森繁久彌3358A大川橋蔵3100B片岡千恵蔵2151C市川雷蔵1737D三船敏郎1685E大友柳太朗1680F市川右太衛門1622G長谷川一夫1610H小林桂樹1310I伴淳三郎1300

参考までに、当時の物価と賃金を

平均初任給

米価(10Kg)

同闇値

昭和20(1945) 75〜80円 3円75銭 140〜280円
   22(1947) 390〜500円 99円60銭 900〜1500円
   23(1948) 約2000円 266円 600〜800円
   32(1957) 約9500円 850円 闇値なし
   63(1988) 約145000円 3746円 銘柄米選別