名古屋野球大会で歓迎に答えて、先頭をゆく三幹事・・・
雷蔵: 現代劇の場合青年より、壮年の人たちが、第一線だからネ。それに地域的な問題もあるんだろうけど、東京はせいぜいバーで時たま顔を合す位だからナ。なかなか、固まるというのはむずかしいんだろうね。かえって封建的だなんて云われている時代劇の世界の方が、若い者が、自由に働けるじゃないかナ。

北上: それはある。時代劇の大スターと、我々の間には大きなヒラキがある。そのヒラキが大きすぎるから、青年俳優には、一つの場があるんだよ。現代劇の場合、場が一緒だから、出る機会が制限されるんだよ。かえって、その意味では現代劇の方が封建的だといえるだろう。

東  : それに原因は、もう一つある。僕等は、先輩諸氏が、歩んで来られた道を歩いているということは、時代劇と心中しようという、一種の使命感があるわけだ。この使命感は時代劇に生きる青年俳優共通のものだともいえる。そんな点で、結びつきも出来たと思うんだよ。

 グランドを一周する俳優青年部チームの雄姿

雷蔵: そう、それはたしかだ。経過に多少の差異はあれ、目的は一つなんだからね。同一の境遇にあるサムライ集団かナ。(笑)

北上: よく、若い人の、新しい時代劇の企画とか、演技とかを聞かれるだがね、皆んな、どう答えてる?

雷蔵: 時代劇というのは、やはり型に発し、約束事の世界だからね。新しい演技といったって大きな飛躍は不可能だよ。時代劇には新劇的な演技、つまりリアルな演技をハメ込もうなんてことは、無理だからね。時代劇には夢がある。夢を生かすためには、そのペースに順応した演技が必要だ。と云って、古めかしい演技の枠に、囚われることもないが、徐々に、新しい方向へ観客、ファンの認識を高める努力も必要だとも思う。

東  : 賛成だね。企画といっても、そう簡単には割り切れないからね。勿論僕等にだってやりたい企画はたくさんある。でもあくまで、企画は対象を基盤に考えなくちゃいけない。御本人だけが、これはいい、全然いける、からなんて、やらして貰ったところで、いかなる名作らしき物が出来たとしても、お客が来なかったら映画は失敗と云えるだろう。そんな意味で、企画はあくまで、観客を本位に、そして徐々に、高めて行く以外に、急速な飛躍は、かえって逆コースともなる危険性が、多分にあると考えるナ。

北上: 黒澤監督らの、新しい時代劇に、ついてくるお客の層をもっと増やさなくちゃいけないんだよ。

阿井: そして、そう云った一連の新しい字打撃への階段を造り出すのが、若い人たちの任務でもあると思うわ。一歩一歩の歩み、こういう事が大切だと思うわ。女性の立場、いや、女優としての立場だわね。時代劇の場合、一種のアクセサリーみたいなものでしょう(笑)。ほんとよ。女性中心の時代劇なんてめったにないんですもの。将来は、女性を中心とした時代劇も、生れていいんじゃないかと思うんですよ。

東  : たしかに、女優さんの場、というものが少ないね。どしどし作られてもいいだろう。その節は、僕等が、バイプレイヤーに廻りますから(笑)。

雷蔵: いや、いろいろ好きなことを喋らせて貰ったけど、結論としてはだね。過去一年間に結実した青年俳優の団結を固め、来るべき年には、新しい幹事の手によって、活発な行事、催しを持って、青年部を大いに意義あらしめようということじゃないの。

北上: そうだ、その線で、大いに頑張りましょうや、よく遊んでもいいから、よく学ぶことです(笑)。