「やりたいと思っていた役が実現した去年は、たいへん幸福な年でした」と雷蔵は言うが、『大菩薩峠』といい『忠直卿行状記』といい、たしかに雷蔵にとっては、なにひとつ不足のない年だったろう。

 その幸福をことしもと、役者としてのがめつさを見せる雷蔵には、上半期の異色作『好色一代男』と娯楽版“濡れ髪シリーズ”が控えている。

 ゴキゲンなきょうこのごろ、といったところだが、それだけに、忙しさも人一倍、「ゆっくり遊ぶ暇もありません。去年の正月は常夏の国ハワイ旅行を楽しんできたので、ことしは反対に雪の国北海道にでも行きたいと考えてます」と、雷蔵は底抜けに明るい気質をまるだしにして語るのである。