“ふとん着て、寝たる姿”の東山が、そっと忍び寄る夕もやの中にしずんだころ、美剣士たちはいずこからともなく、会場へ乗り込んできました。
おたがいに顔を合わせては、「やあ」「おす」と遠慮のない挨拶。所属は違っても、みんな狭い京都で、始終顔を合わせて仲良し同志なのです。なんの気がねもないままに語る話は、いつ果てるとも知れず、会場はたちまちのうちに、はちきれんばかりの若い雰囲気につつまれて行きました。
☆酒豪の美剣士?
錦之助 相変らず、飲んでるんだろう?(と雷蔵さんに)
雷蔵 飲んだって、ボクの飲むのは錦ちゃんたちにくらべれば雀の涙さ。
新太郎 東映組は、浴びるほうだからな。おかげで、太秦の酒の値段が上って、こっちは大迷惑・・・(笑)
扇太郎 ウソばっかり・・・(笑)いうことがオーバーだよ。
柳太朗 みなさん相当にやるらしいですね。「酒豪の美剣士」なんて、あんまりきいたことないけど・・・(爆笑)千代ちゃんや橋蔵さん、さっきから黙ってるけど、どうしました。
橋蔵 あのう、べつに・・・
千代之介 そのう、実は、早く浴びたいんです。(爆笑)
雷蔵 それそれ。まず乾杯といきましょう。(笑 盃をとりあげる)
一同 賛成賛成。カンパイッ。(爆笑)
柳太朗 では、こっちのほうもそろそろ営業にとりかかろう。(笑)今日は、とうとう「明星」から司会の役目を押しつけられたんですが、同じ会社でも、これだけの顔ぶれはなかなかそろわないのに、たいへん売れっ子のみなさんが、これだけ集ってくださったことは、司会者といたしましては、まことにカンシャカンゲキでございます。ところで、千代ちゃんは、いか東京で「夕陽と拳銃」で初の現代劇に入ってるんですが、どうですか、感想は?
千代之助 ニ、三日出番がないんで、用たしにきたら早速つかまっちゃって・・・(笑)現代劇といっても、舞台が満州で、衣裳も満服(満州服)が主ですから、ずいぶんやりいいんです。
扇太郎 だぶだぶの服だから、スタイルの悪いのが目立たなくていいね。(爆笑)
千代之助 こら、そういうことはナイショ話にするもんだぞ。(爆笑)
橋蔵 勝手が違うだろうね。
錦之助 僕も「海の若人」のとき、ちょっと変だったね。刀がないから、腰の辺りがさびしくてね。
千代之助 僕は自分じゃそうでもないんだけど、監督さん(佐伯清監督)なんかにいわせると、「その腰は、まだ刀が残っている腰だ」なんていわれるんですね。(笑)
新太郎 現代劇では、水をのむのでもコップを手に持って、それから飲むのじゃなくて、持ったらすぐに口にもってゆく。つまり時代劇よりテンポが早いんじゃないですか。