☆ラヴシーンはやりにくい

橋蔵 僕は一番初めの「笛吹き若武者」でも立ち廻りがあったんですよ。それを映画館でみたんですが、自分の姿をみるのは初めてですから、こわさで一ぱいだったんです。ところが、みてみると、女の子が棒きれをふり廻してるようで、悲しくなったんですよ。自分ではとても男らしくやったつもりなのに(笑)

千代之助 僕もそうでしたね。踊りをやっていたせいかもあるかもしれないけど、どうみても強そうじゃない。(笑)

「三日月童子」の千代ちゃんの、水もしたたる若衆姿−

錦之助 斬られる原健策さんたちのほうが、よっぽど強そうだったりしてね。(爆笑)

千代之助 右太衛門先生(市川)のは、踊りと剣とが一体になって、形も美しいし、実に強そうなんですがね。(笑)

橋蔵 人を斬るなんて、ほんとうからいったら、なみたいていのことじゃないと思うんですよ、生きている人間を斬るんですから、これは大変な気構えでなければ人は斬れないと思ってやっているうちに、とても気もちがよくなってきちゃった。(笑)

「江戸三国志」の美丈夫徳川万太郎

柳太朗 掛かってくれる人がみなうまいからね。(笑)

橋蔵 そうなんです。うまく倒れてくれるんですね。(笑)だからやたら人が斬りたくなって・・・一種のスリルですね。

柳太朗 好きな斬り方とか、構えがあるでしょう?

雷蔵 やはり、刀が大きく動くように、さばきが綺麗にみえるように、上からふりかぶって、肩口から斜めにザックリと・・・(笑)

「綱渡り見世物侍」で颯爽若殿ぶりの雷蔵さん

千代之助 しかし、ものによっては、あまりバッタバッタと斬るのも、かえっておかしいこともありますね。

柳太朗 ずいぶんサツバツな人殺しの話になって、警視庁あたりからニラマれるといけませんから、この辺でラヴシーンの話にうつりましょう。

新太郎 時代劇のラヴシーンは、ふつうの娯楽ものなら、やはり絵になるような、キレイごとのほうがいいんじゃないですか?

錦之助 そうね、へたに時代劇でキッスの場面なんか入れると、かえっていやらしいですね。

橋蔵 なにが映画で一番やりにくいといっても、ラヴシーンくらいやりにくいものはないですね。(爆笑)ほんとうですよ。

柳太朗 扇ちゃんは?

扇太郎 僕はまだ、映画でラヴシーンしたことはないんです。

雷蔵 映画でないというのは、ほんものではしたっていうの?(爆笑)

扇太郎 (あわてて)そういうわけじゃないです。やだなあ。(真赤になる。爆笑)

初めての映画では、NGばかりで泣いちゃった

  「忍術左源太」で、千代之助兄さんと共演したときの、扇ちゃんの美少年ぶり