スタアの背くらべ

 

 香川京子インタビューで、香川さんがこんな思い出を話してくれた。まだ新人だった頃、「勘太郎月夜唄」(田坂勝彦52年)では長谷川一夫と共演した時、彼女は背が高いので鬘をかぶると長谷川より大きくなってしまう。それで並ぶ時は足元をちょっと掘って、低くなるようにした。

 こんな話を聞いていたので、先日二人が共演した「鼠小僧忍び込み控」(加戸敏56年)を見直す時、注意していたら、確かにそう。でも彼女、一歩下るような感じでうまくごまかしていました。では、この二人の身長は実際にどの位だったかと、55年の「キネマ旬報」の増刊「日本映画大鑑・映画人篇」の俳優名鑑を開いてみると、長谷川一夫が162センチ、香川京子は160センチとありました。まア公称ですが。

 ついでだからパラパラめくって、各スターの背くらべをしてみよう。この時点で一番背が高かったのは横尾泥海男(よこおでかお)、180センチ。彼は戦前からデカいのが売り。でも戦後は活躍していないので、本特集(註:「戦後が匂う映画俳優」)では割愛。斉藤達雄、178センチ。彼も同様。彼氏、トシをとって昔より縮んだみたい。

 今回登場した中では、179センチの三國連太郎が最高峰らしい。田浦正巳が178センチでこれに続く。177センチ台には菅佐原英一、龍崎一郎、宝田明と太刀川洋一が176センチ。伊豆肇が175・7センチ。早く死んだので載っていないが、沼沢勲も背が高かった。180センチ近くあったんじゃないか−とこの辺が当時の男優巨人族。

 小さい方では、大河内傳次郎が・・・160センチ。そんなにあったかな。公称、公称。それ以下を捜すと、159センチに東野英治郎、中村伸郎、宮口精二の新劇トリオに、三井弘次、柳谷寛、左ト全。158センチに中村是好、谷晃。清水元は157.6センチと細かく刻んで来た。藤原釜さん、156センチ。晩年に見かけた時は、ずっと小さく見えたけれど、一番チビは堺駿二、154.5センチ。本当はもっと小さいだろう。まるめてポケットに入れられる位じゃないかな。

 この時代の男優の平均は、大体170センチ前後というところ。当時の日本人としては、かなり大きい方だ。やはり少しでも目立った方がいいのだろう。

 気になるスターの身長をアトランダムに列挙しておこう。二枚目では池辺良、173。佐田啓二と小泉博が171.2.菅原謙二、174.2。佐野周二と上原謙が170前後。時代劇では大友柳太朗と市川右太衛門が170、トシの割に大きい。雷蔵、勝新と千代之介が170で並び、錦ちゃんは162か。でも大きく見えた。悪役の新藤英太郎、173.5.さすが貫禄。笠智衆、171。森繁久弥、168。森雅之、165。志村喬、163。田村高廣氏は170と記録されている。

 そんな中に、身長180センチの石原裕次郎が、センセーショナルに登場したのだった。

最後に“ビッグ”三船敏郎は?何てこった、これは記録なし!御本人に聞いときゃよかった。(田中真澄 「戦後が匂う映画俳優」nosideより)