ポスターの重要性は

司会: 最近はポスターの作り方もスマートになって、よくなって来ましたねェ。

人見: 新聞広告では各社で一番で、いろいろ賞をもらっている程ですよ。

角田: なんと云っても、お金をかけられるという点では東宝ですねェ。

人見: そんなことはないんですが。

角田: ほかの会社より、広告が少しでも大きいと嬉しくなりますよね。

人見: うちは三大新聞に非常にスペースを取っているわけで、あとのスポーツ紙なんかは予算の関係で多少小さくなってるけど、絶対数は多くても決して少なくありませんよ。

伊奈川: あの“ジャック(惹句)”というんですか、あれは宣伝部で考えるんですか。

人見: 林君達が考えるんです。

伊奈川: この頃だいぶよくなりましてねェ。前は“斬って、斬って、斬りまくる”なんてね(笑)この頃だいぶアカ抜けして来ました。(笑)

角田: 言葉が良くなって来ましたねェ。

人見: 林君から果物籠を差し上げるそうですから。(笑)

林: この頃、僕のが採用されないんで、いいんでしょう。(笑)

一同: (笑)

林: 裏話になるけど、ポスターの図案を出稿するまでに宣伝スチールがとれず、古い似たような写真で首のすげかえをすることがある。こんなことじゃいいポスターが出来るわけないでしょう。これは製作の悪条件を宣伝部が肩がわりしている一例ですがね。

人見: そうね我々の方から俳優さんにお願いしたい事は、宣伝に協力してもらいたいって事です。撮影などで夜間で疲れていましょうが、早くポスターを作るためには、早く宣伝スチールを撮ってもらう事ですね。その効果を認識してもらいましてね、全面的に協力してもらいたいんですよ。いいものを作り、商売をするためにはねェ。

小木下: 一番始めの一枚が大切ですね。

人見: でも雷蔵さんは熱心な方ですからね。

司会: 大映の中ではうるさい方ですか。

人見: そりゃうるさいですよ、だけどうるさいということは、それだけ熱心だといえますからね。

角田: 『江戸へ百七十里』は誰がみても見に行ってみようかという広告でしたねェ。

司会: 封切日を先に決定しているのは一寸大変ですねェ。

人見: 今の状態ではやむを得ないんですが、徐々に軌道に乗せるべく全力をつくしていますから、必ず余裕を持って製作できるようになりますよ。そうならなけりゃいけないんです。

伊奈川: 毎週封切っているのを二ヶ月位なくして、リバイバルのものを全部やって、ゆとりを作るという事は出来ないんですか。

人見: 中々そう簡単には参りません。

伊奈川: 組合せも随分影響がありますね。

人見: 勿論そうです。『斬る』の成功は、『黒の試走車』との二本立だったと思います。

伊奈川: それに料金も高いですし・・・、これは宣伝の方でないかもしれませんが。

人見: 料金が高くても、お客さんを満足させるものであれば高いとも思いませんけどねェ。

伊奈川: 東宝の場合は、ストーリーやメンバーはたいして変ってないけど、面白いのは俳優の魅力ですか?

角田: 面白がらせる様に作ってあるんですねェ。

人見: 大映でもサラリーマンスリラーですか、『黒い試走車』の様な・・・当りましたからね、この信用ですよ。あの種のものはまだいくらでもありますからねェ。

小木下: そうかと云って、あんまり同じ様なものを続けると良くないんじゃないですか。

人見: キャラクターの面白味ですからね。例えば雷蔵さんの『斬る』が当って、『剣に賭ける』と同じ様なジャンルのものでもこれで行ければ新しいものが出来るんですから・・・時々『破戒』の様な冒険をあそばすけど(笑)

角田: もう少し時間があれば当った映画でしたね『破戒』は、惜しいわ。

人見: 映画のできは実に堂々たるものでした。

伊奈川: 都会で受けても、地方で受けないものもあるでしょうね。

人見: それはあります。

角田: そういうのは分けた方がいいんじゃないですか。

林: 地方向けの作品を作れという意味ですか?

角田: 第二東映的なものですね。