“大先輩” 市川雷蔵

 僕は、時代劇ならたいがい好きです。チャンバラが好き。小学校の頃は、「忠臣蔵」や「次郎長」物なんか、代表的な時代劇はほとんど見ました。十六年前デビューした時の、『潮来笠』が映画化されたときは、歌だけのシーンで出演させてもらいました。

 その後、『花の兄弟』で市川雷蔵さんと共演して、化粧の仕方から、着付け、刀の持ち方までずいぶん親切に教えていただいたものです。男性的な勝新さんに比べて、雷蔵さんは体の線は細いけれど、インテリジェンスが役作りに光っていると思います。『炎上』の演技は素晴らしかったし、『忠臣蔵』の内匠頭なんか、役どころがピッタリでした。

 僕もこんど、新宿のコマ劇場で、内匠頭と、不破数右衛門と早野勘平と三役をやることになっています。僕の舞台には立ち廻りが必ずあるんです。映画のチャンバラの方が、確かに迫力は出るんですが、舞台でやるのも好きです。

 大時代劇ブームの頃は、ロケ隊も五、六十人の大編成でしたから、スケールが今とはたいへんに違いますね。最近では、電信柱のないところを必死で探すなど、何か、作る側にも夢がなくなってしまいました。

 時代劇の諸先輩はみんなで、大豪華キャストで次郎長一家の話なんか、スケールの大きいものを作ってほしいですね。(昭和51年11月8日発行 「週刊サンケイ臨時増刊・大殺陣チャンバラ映画特集」より)