長谷川さんアメリカへ行く

長谷川 大体四週間位の予定で、いろいろ見てきたいと思うてんのやが、まだアチラでの細いスケジュールはきまってません。

山本 やっぱり、演劇方面のゴ勉強でしょうネ。

長谷川 いや、時間の許すかぎりスタジオの方も見たい。これからは日本もワイド映画の時代やからネ、ワイド映画の演技という点でも、まだまだ研究する必要があると思うのや。それでも、やっぱりおしばいを見るのは、大きなタノシミです。これからは、ちょうど演劇シーズンでしょう。ブロードウエイで、大いにおしばいを見せてもらうつもりです。スタジオの機構も、よう見てきたい。考えますと、寝るヒマもない位のスケジュールや。(笑)

市川 アチラで、「三浦按人」に出演されるというようなことが新聞に出てましたけど。

長谷川 そらまア手廻しのええことやナ(笑)まだはっきりしたお話しはありません。ストーリーによって出演するかも知れないけど、それより折角のチャンスやから、うんと見てうんとツメこんでこんならんと思うてます。ヨク張りかナ。(笑)

山本 お帰りになるとすぐ東宝歌舞伎ですか?

長谷川 はア、五月一パイは、東宝歌舞伎の舞台の予定でネ、当分あんたたちともお目にかかれんなア、それでも大丈夫。あんたたちがお元気で活躍してくれてたらちっとも心配ない。心丈夫に思うてます。

市川 二月もお目にかかれんのは淋しいなア。

長谷川 二月位はすぐ経ってしまうがナ。六月には、ワイド映画で「銭形平次捕物帳」を撮る予定やので、大いにワイド映画の勉強して物識りになってきますワ、それよりあんたたちあたしを忘れんといてや(笑)

山本 あら、いやだ、じゃ先生お元気でいってらっしゃい。お土産たのしみにしていますワ。

市川 女の人はこんな時になってもヨクの深いもんだナ。(笑)ボクの方もお忘れなく。(笑)じゃアお元気で。

長谷川 ありがとう、皆さんもお元気でネ。

(長谷川さんは、この座談会の翌30日多くの皆さんに見送られてビィスタビジョン研究のため、夫人同伴で空路アメリカへ出発されました)

(57年6月5日発行 別冊近代映画源氏物語 浮舟特集号より)