結婚だけが幸せかしら?

対談: 市川雷蔵
朝丘雪路

 

 大阪・新歌舞伎座の市川雷蔵。・朝丘雪路初顔合わせの舞台が好評。

 とりわけ『番町皿屋敷』では、主(あるじ)青山播磨の愛を疑って苦しむ腰元お菊の女ごころを、朝丘雪路が的確な役づくりで演じ上げているのがみどころです。
 大映作品『若親分』シリーズでは、すでに二本共演している二人だから、イキもピッタリですが、くつろいでの対談はこれがはじめて。
 「この前の橋蔵お兄さんとの対談、ズバズバおっしゃったけど、あとで橋蔵お兄さんが喜んでらしたわ。あたしも、きょうは遠慮なく、いろいろ言ってほしいんです」
 「といっても、暴言をしないように気をつけるよ。(笑)女の人の前だとやっぱり遠慮しちゃうからね」
ということでしたが・・・

絶品とホメられて

朝丘 お疲れでしょう?夜、昼ともに重い役ばかりだし、いろいろ気苦労も大変なんじゃないかしら?

市川 食欲不振で、困っちゃう。

朝丘 そりゃいけないわ。もっとお肉なんか食べなきゃダメよ。

市川 わかってるけど、ご飯が食べたくなくなっちゃうの。

朝丘 (心配そうに)疲れすぎですね。

市川 映画だと早く終るから、家へ帰って、ゆっくりお酒をのみながらご飯食べるけど、舞台のときは、ニ、三十分の間に急いで食べなくちゃならないし、お酒も飲めない。だから食欲もそそられない。

朝丘 (首をすくめて)あたしなんか、食欲をそそられすぎて困っちゃう。(笑)こちらへきてから、気分的にのんびりしますし、すごく楽しいせいか、また太ってきちゃった。(笑)

市川 だけど、以前とちっとも変ってないな。いまもかわいらしいけど、昔はもっとかわいいお嬢ちゃまでしたね。

朝丘 あたし、雷蔵さんが『花の白虎隊』をお撮りになってるころからのファンなんです。そのころ、まだ宝塚にいて、お友だちと、ワーワー、キーキー。(笑)あれからみると、いまはお姉さんになっちゃったわね。

市川 もう、いくつですか?

朝丘 ちょうど三十。

市川 へー。三十には見えないな。

朝丘 三十、三十って、あんまり言わないでよ。(笑) 

市川 うん、話題を変えよう。(笑)あなた、最初は歌が専門だったね。なんとか会というのを作って・・・。

朝丘 良重(水谷)ちゃんや、たまみ(東郷)ちゃんと“七光り会”というのを作ったんです。

市川 東郷さんは、いまどうしてるの?

朝丘 アメリカで、山野愛子さんの美容室に入って研究して、今後は美容師として立つらしいわ。

市川 芸能界はやめて?

朝丘 ええ、ぜんぜんもう・・・。楽屋へ訪ねてくれたので「どうすれば、もっときれいになれる?」って聞いたら、「知らないヨ」ですって。すごい美容師なの、彼女は。(笑)それはそうと、きのうパパ(伊東深水画伯)が舞台を見て、雷蔵さんがすばらしいので、おどろいていました。寿海先生とは昔からおつき合いがあるんですけど、雷蔵さんがお父さま(寿海丈)の若い時分に、あまりそっくりなんでおどろいたって・・・。

市川 ほんとは血はつながっていないのに、縁があって養子にいくと、似ちゃうのかな。亡くなった団十郎さんが、なんとなく九代目団十郎に似てるといわれてましたが、そういうようなもんですね。

朝丘 パパが、『将軍江戸を去る』の中の、雷蔵さんの山岡(鉄舟)は絶品だってすっごくほめてましたよ。

市川 (思わず表情がほころんで)お父さんにおめられるのは、うれしいね。芝居をうんと見ておられる方だから・・・。