いつの世も女は浅はか?

朝丘さんは結婚しても一生仕事はやっていっていいと思うんだ・・・

朝丘 「番町皿屋敷」の青山播磨の役は疲れません?あたしのお菊はおじぎばかりしているせいか、とてもくたびれる。

市川 くたびれるね。播磨はお父さん(寿海丈)の当り役だけど、いろいろ比較されるのがつらい。やれ声が若いとか、いろいろ言われるでしょう、第三者の人たちに・・・。ほんとは播磨は、ぼくぐらいの年の男なんだけどね。

朝丘 でも、うちのパパ、雷蔵さんの口跡(セリフのめりはり)がとてもいいと言ってましたよ。・・・ですけど、あのお芝居よくできてますね。古い話だのにとっても新しい。

市川 男女の心理を、あれだけドラマチックに盛り上げて、歌舞伎のスタイルにまとめてあるのは、相当なものですよ。しかし、あそこにも描かれているとおり女の心というのは、いつの世でも浅はかなんだなあ。(笑)

朝丘 でも、播磨のような男性が、果たして現実にいるかしら。

市川 播磨が、いくら、お菊しか愛した女はいないんだといっても、やっぱり疑ってしまう。・・・それがつまり、女心というものなのだろうけど。

朝丘 そうね、私の友だちなんかも播磨に同情して「お菊が殺されるのは、当たりまえですよ」ですって。(笑)

市川 ハッハッハッハ・・・。しかし、あなたはタフだな。殺されても死なないほうじゃないかね。(笑)

朝丘 来年から、少し仕事をセーブしようと思うの。そのためテレビは、みんなおりましたし・・・。あたし、少し仕事をしすぎると思いません?

市川 ふつうの人ならきっと具合が悪くなると思うけど、なんともない。あら、不思議やね。しかもなにをやっても、いい結果がでている。珍しい人ですね。

朝丘 あたし自身も、自分の、身につくものをやってれば、なにをやってもいいと思っているんです。とりあえずは、来年のリサイタルを目標に、少し欲張ってみようかと思ったりして・・・。リサイタルには、雷蔵さんも死んでも出る、といってくださったでしょ。奥さんも聞いてらしたから、ここで確認しときたいわ。

市川 (苦笑しながら)死んだら、出られへんよ。(笑)まあ、死んだつもりで、出ます。(笑)ミュージカルをやって、あなたとデュエットで歌うか。(笑)

朝丘 (手を叩いて)わァ、すてき!・・・橋蔵さんのお兄さんも、好きですよ。歌が。

市川 ああ、ヘタなわりにね。(笑)好きと上手は別だからな。(笑)

朝丘 へたでもいいと思うの。楽しければ。

市川 聞いている人が楽しくなかったら、ダメだよ。(笑)こそばゆうなったり、腋の下がキュッとなるようでは。(笑)

朝丘 イジワル・・・ね。

市川 いっそぼくは、藤原義江ばりに、オペラでもやるかな。

朝丘 そうね、カルメンかなにか。でも、かゆくならないように。(笑)

市川 とにかく・・・ミュージカルって愉快だよ。いつか若尾ちゃんと狸御殿撮ったけれど楽しかったな。・・・ぼくは昔から宝塚に出たくてしょうがないの。フィナーレで階段から降りてきて歌うでしょう。あれが好きでね。

私ハッキリ言ってくださる人が好き。きょうは遠慮せずに言ってくださいね・・・