温かい新家庭から新たな演技を

新婚スタア放談

テレビ攻勢で斜陽といわれる映画界だが面白いものや、良い作品なら観客はついてくるさ・・・常にその気概は充分更に結婚を契機に円熟した演技を目標とするお二人が、久方ぶりに顔を合せて愉快に語り合いました。

解放感が魅力

 結婚すると男は変るというけど、たしかにおれは変ったものね。

市川 そんな、一ヵ月や二ヵ月で変るかなあ・・・。

勝 おれは一日でも変っちゃうよ、変るときは・・・そのかわり、あくる日またもとへかえっちゃうかも知れない。結婚してからは酒もバカ飲みするということもなくなった、自分の身体に気をつけるようになったものね。

市川 そうかな、ぼくは自分が変ったとは思わないけど・・・。

 アメリカでは、アカデミー賞授賞式に出席したというけど、感想はどうだった?

市川 アカデミーの感想といったって、まあ、あまり日本と変らないけどね、ああいう授賞式は・・・ただ、演出が派手だからもう少しショウがかっているね。

 英語なんかは困らなかった?

市川 ぼくたちは直接、アメリカ人とあまり話することがなかったものね。ずっと、ついていてくれる人がいたからね。

 おれはハワイへ行ったとき困ったよ。ホテルへ外人が「ハロー」って、電話かけてきたんだ。英語なんだよ。「OK、うん、うん。イエス、オーケー」とか何とか知ってるだけ英語をしゃべっちゃったんだ。すると、ロビーへ写真を撮りたいから降りてきてくれっていうんだ。

市川 それでどうしたの?

 とうとう夕方までずっと、六時間か七時間くらい向うのカメラマンを待たしたがね。困っちゃったよ。

市川 カメラマンもそれではカンカンに怒ったろうね。

 向うに行くと堂々と歩けるからいい。日本にいると、やはり俳優という特別な職業という目で見られる、それを意識しなけりゃいけないけど、銀座通りなんか二人きりで歩くと意識するよね。ところがハワイあたりへ行ったら堂々と手をつないで歩ける。それが日本へ帰ると出来ない。芸能人は向うへ行くと気持がフリーになれるんだね、解放感がある。

市川 俳優だか誰だか分らないしね。向うでは、新婚旅行ですといったら、コングラチュレイション(結婚おめでとう)という言葉をかけてくれるけど、日本みたいにジロジロものを見る見方はしなね。知らん人であってもすぐ「おめでとう」といってくれるけど、日本はおめでとうどころか冷かすような・・・感覚的に違うね、まるっきり違うね。

 おれは坊主で新婚旅行に行ったもんだから「坊主、こっち向かんかい」知らん振りをしていると、「坊主」がしまいには「クソ坊主」。「エロ坊主」になる。おれは新婚旅行だからと二回くらいはがまんしているけど、三回目くらいになると「この野郎!」となってしまう。そうすると、折角、今までの楽しいムードがガタガタときちゃうわけだよ。

市川 そういうところは日本人というのはだめだな。外国の人はそういうところは全然あかの他人でも、まして人種の違う人でも、新婚旅行できてるということを知れば「おめでとう」といってくれるものね。たいへん好意的にね・・・。

 ところで雷ちゃんの場合はどうかな、映画界という特殊な世界に対する奥さんの理解という点では?

市川 そうね・・・芸能界も一般もそう変りはないんじゃないかな、ことさらね。世の中の男性の職業というといろいろあるけど、サラリーマンもあれば技術者もあれば、ともかく何種類あるか分らないほど職業がある。その職業を理解するというのは妻のあたり前のことだからね。

  じゃ及第点というわけだね(笑)

市川 あたり前のことだよ。妻というのは、主人の職業に反対だったらどうにもならんわね。結婚する価値がない。やはり、女の人がほれるというのは、男性個人の魅力もあるけれども、その仕事に対する男のいきかたにほれる場合が多いのと違う?仕事ぶりというか、それが一つの男の魅力なんだから。それを職業を否定するということでは結婚というのは考えられない。

 そうかなあ(笑)

市川 目がいいとか体つきがいいとか、毛が濃いのがいいとかそういうことは末梢的なことでやはり・・・。