映画産業、斜陽化の声が、大きく言われている現在、京都の場合はどうか。

 松竹、大映、東映と、在洛三撮影所の現状について、身近に見ている映画記者四人の方に、忌憚のない、率直な意見をきいた。

 

 大 映 京 都

D 『不知火検校』とか『座頭市物語』のような作品が、出来たのは、逆に言えば、題詠の首脳部が雷蔵を中心に考えていたから、出来たと言えるね。雷蔵の『破戒』は、先に『炎上』の成功があったからなんだろうけど、人気の点では、必ずしもプラスにはなっていないように思うな。

A 雷蔵の場合、例えば、松竹でやっている『切腹』のような、どちらかと言えば腹芸的な、心理的なものも出来るんじゃないかと思うね。

C 勝は、どちらかというと行動派的だし、雷蔵は、そういう知的なものも出来ると思う。

A そういう点、性格の違う、雷蔵と勝の二人がいるというのは、大映の強味だろうね。

D だから、いま人気が上り坂の勝の企画が立ちやすいだけに、雷蔵ものの企画は、余程慎重にたてないとね。

B それと、三隅研次、田中徳三、池広一夫、西山正輝という監督の新人が出たというのも強味だ。これらの新人を抜擢し、適切に動かして、勝負させて来たというのは、大いに評価していいと思うな。

A ただ、勝の場合、当ったからと言って、同じような企画ばかりが出てくるというようなことは用心しなくては、と思う。

B そうでうね。たまに出てこそ、異色作だけど、いつも出ていては、異色も、異色にならなくなる。

A そう。『新悪名』でも、そろそろ、鼻についてくるし、そろそろ、そのからを破って欲しいと思うしね。

B たまには、さっそうたる二枚目のやくざでもやらないと、いつもめくらでは困るわけだ。(笑)

D 勝の二枚目というのは本当に綺麗なんだから。

B 雷蔵の場合、勝ほどのアクの強さとか、体臭をかんじさせるようなのはないでしょう。どちらかと言えば、『濡れ髪シリーズ』のように、軽いのがあっている。

A 氷の刃的なものは・・・。

D それは、引き出せると思う。『大菩薩峠』の机竜之助のように、ただ、体当り的なものはね。

C 雷蔵の場合、やはり、大映のトップスターだけに、企画もむずかしいね。長谷川一夫のやったものを、そのままやるわけにはいかないし。

A 長谷川さんは『樅の木は残った』をやるらしいね。あれは面白いものが出来そうだ。

B ただ、『樅の木は残った』も、奇麗事に終ってはつまらないね。雷蔵、勝に続くスターとして、東京から、藤巻潤をつれて来て『地獄の刺客』を時代劇の第一回主演としてやらせることにほぼ内定したらしいね。藤巻は、雷蔵、勝につづく第三のスターとして、大いに興味もあるし、売り出せるんじゃないかと思う。

D 柄もあるし。

B 三隅監督も、大いに乗り気らしいんだ。

D それは大いに結構だけど、本郷功次郎の二の舞だけはやめて欲しい。本郷の場合、折角時代劇で人気が出かかったのに、途中で現代劇にもって行き、結局、人気もどっちつかずになってしまった。

C あれこそ、二兎を追うもの、一兎も得ずのいい例だ。

D 結局、本郷も、会社も損したね。

D 売るなら、売るで徹底的にやらなくてはね。

C 大映の場合、異色な企画に期待ももてるし、また、さっき言った、若い優秀な監督も出て来たし、女優も、中村玉緒につづいて藤村志保も売り出そうというきざして、出て来たし橋幸夫というタレントもかかえているし。

B ただ、もう一人か、二人の男のスターが欲しいところだ。

「時代映画」62年7月号より