雷ちゃんの勉強熱心

池広 彼は非常になんでも積極的ですよ、ずぼらしないで。たとえば『ぼんち』の時も、ちゃんと、大阪の山崎豊子さん(原作者)のところまで行くし、大阪のお茶屋を見てまわったり、足袋屋さんに行ったりね。これは当然のことかも知れないけど、なかなか出来ないことだよ。あの忙しい身体でね。それでいて、遊ぶ時は徹底的に遊ぶしね。

土井 あれはいつごろだったのかな、一年ぐらい前かな。雷ちゃんピアノ買ったでしょう。いや買わなかったのかな。ま、買う、買わないは別として部屋(スタッフ・ルーム)に入って来て、誰かピアノ弾ける人知らないかっていうんだな。ピアノを習いたいっていうんだ。どうしたんだいと聞いたら、俳優として音楽というものが、わからないといけないだろうと言うんだな。趣味的なものも入ってるかも知れないけど、しかし、習うと言うこと、観賞するということはまた別だからな。とにかく血となり、肉となったりするものはなんでもつかんでいこうというんだな。

池広 それから、角力やってるでしょう。立命館(大学)か、同志社の角力部に行ってね。彼の欠点は肉がないということだったんですね。それで、時代劇の場合、着物を着ると貧弱に見えると言うんで、角力部に入って練習してたんだよ。それで腰をいためたとか、何んとか話があったろ。一度。

土井 僕は角力の話は知らない。だけど、馬を買ったろ、二年ぐらい前かな。で、毎日練習していると聞いて、熱心だなと、感心したよ。

池広 つまり、彼は貪欲なんだね。

土井 セットの隅で、待時間なんかに話ししていても、いろんな本を読んでいることを、大変よく感じますね。本当にいろいろ読んでいますよ。もっと視野を拡げようと努力していることが、そういう形でちょいちょい聞くでしょう。そういう話は大変感心しますね。

太田 本の話だけど、内村直也の「ドラマツルギー研究」って本あるでしょう。あれね部屋で、面白いって話していたの。その時、横で聞いていたんだな。それで後で自分でコッソリ買って読んだらしいんだな。すごく勉強になったって、喜んでいたけどね。しかし、彼ほど本の理解なんか、よくする人ないと思うけどね。

池広 彼のうちに行くと、いろんな本がありますね。一応、野心作とか、評判作みたいのは、全部読んでますね、専門的な本もずい分もってますよ。

土井 本は読むにしても、誰でも読んでいるんだろうけど、どこまで、つっこんで、やってるかということだな。彼の場合、大変つっこんでやっていると言うことは出来ると思うんです。表面には出てこない、そういう努力が、大変熱心だと言うことになると思うけど。

池広 それだけ読んだり、いろんな勉強をして、その上、それを吸収する素質に恵まれているんだろうな。やっぱり。『ぼんち』の時でも、あのメーキャップの研究のために、ハリウッドのメーキャップについて書いた本を取り寄せて、翻訳家をよんで、翻訳させてそれを読んで、やっと始めたんですからね。なんか貪欲な研究心といったもの、感じますね、なんだかほめてばっかりだな。(笑)

太田 雷ちゃんに関しては、別にけなすというとこないね。

土井 人にけなすところがないと言われることを、けなすぐらいかな。(笑)