江戸の昔から親しまれてきた明石町河岸と佃島を結ぶこの渡船も、あと二・三年のいのち。新しく橋がかけられるからです。久々に上京した市川雷蔵さんは、夏の午後を、ポンポン蒸気の渡船にゆられました。

 「東京にもまだこんなにのどかなところがあったのかね、オドロイたよ。それに料金が只とは、せちがらいこの世の中にめずらしいことですわ・・・」

 雷蔵さんは公営の渡船にすっかりゴギゲンです。江戸の名残りを佃島にもとめて、東京の旅情をほんのちょっぴり味わった半日でした。

 

渡船から降りれば陸は暑さが激しい