若い橋クんへの期待と希望

いま撮影中の「おけさ唄えば」で、十代人気スタアの代表選手ともいうべき橋幸夫君と共演していますが、ぼくが、いまの橋君くらいの年ごろのことと思いくらべると、まことに感慨無量のものがあります。

最近、マスコミの力が増大するにしたがって、角界における人気スタアの世に出る年代がだんだん若くなってきた傾向があり、そのテンポもますます早くなりつつあります。その代りに、人気の出るのも早いが、忘れ去られるテンポもまた早いということもまた、概して否定出来ない現実のようです。

しかし、ぼくは少くとも橋君だけは、そんな例になってほしくないし、また、きっとならないと思っています。

いまのところ、橋君は、高校に在学中でありながら、学業の方よりも、歌や演技の道の方にいそしんでいる形で、これについては、橋君自身としてもいろいろと悩むところがあるらしく、ぼくもまたその気持ちはよくわかるような気がします。

しかし、学校へ行って勉強するということは、その最後の目的が、他日世に出てゆたかな良識と教養をそなえて社会人となることにあるのですから、たとえ学校へ行っていてもそうなれない人があると同時に、たとえ学校へ行かなくても本人の心掛け一つで、立派に良識を養成していくことが出来るものだとぼくは信じています。

橋君が歌や映画の勉強で得るいろいろな経験が、かならず彼を良識豊かな青年にきたえ上げて行くことでしょうし、またそうした良識人になることが、映画俳優としても一流の人間となれる可能性をいよいよ高めて行くことにもなると考えられるからです。

そうすることによって、わが橋幸夫君も不動の人気を誇る日本の永遠の歌手となり、同時にまた優れた映画人としても、立派に大成するだろうと、ぼくは心から大いに期待しているのです。

橋君ならばきっとやれる、きっとそうなる、ぼくは固くそう信じています。