今月の座談会は、片や時代劇、片や現代劇にそれぞれ大活躍されている第一線の若手スタアにお集り願って、大いに時代劇の面白さ、現代劇のよさを討論して頂こうという趣向−

「東京で過すのは去年から合計これで二週間目ですよ」という市川雷蔵さんを中心に珍しい顔ぶれで、ではさっそく始めて頂きましょう。

お好み座談会

東西スタア青春合戦

☆着物はキライよ!

雷蔵 若尾さんがまだ見えないようですけれど、そろそろ喋ってましょうか。どうも僕が司会者みたいで具合がわるいな。

伏見 そんなことありませんよ。

雷蔵 とにかく現代劇のこと喋れっていったって、僕の場合は「薔薇いくたび」だけですからね。それも劇中劇の踊を踊る場面だけです。

山本 アラ、大阪弁でセリフがあったじゃないの。

雷蔵 そう、矢島ひろ子さんとホンの一寸、喋るんですが、あれでも現代劇出演ということになるのかな?とにかく扮装して、日本武尊(やまとたけるのみこと)みたいな頭をして、全部で総計七カットか、八カットですからね。伏見君はどうです。現代劇は?

伏見 僕は全然、まったく。時代劇だけです。

雷蔵 それじゃ、今夜は純然たる時代劇側としては伏見君と僕だけだ。大いに時代劇の為に、四人を向こうにまわして熱弁をふるいましょう。

伏見 ヒヤヒヤ(笑声)

山本 京都でいつもいじめられているから、今夜は、しかえしして上げるわ。ねえ石浜さん。

石浜 僕も「青銅の基督」で、はじめてカツラをつけたんですが、あれが一本だけです。あれでも時代劇の中に入るのかな?

伏見 モチロン、時代劇ですよ。徳川時代ですからね。面白いですよね。時代劇は・・・。

石浜 ダメです。カツラをちけると休み時間に寝ころぶことも出来ないからナ。(笑)

山本 男の人は、不精ね、私達は現代劇でも時代劇でもお休みの時間に横になるなんて、考えたこともないわ。ねえ、和子ちゃん。

和子 でも・・・。(と、一番はじっこでモジモジしながら)私、キモノきらいよ。一日着てたらこんなになっちゃう(と、胸に手を当てて、胸が一杯という表情)

石浜 僕もね、着物を着た写真を撮ったことはあるんだけど、実は、一枚も着物はないんだ。浴衣と丹前だけだよ。着物というものは。

(若尾さん登場)

若尾 どうも、遅れまして。皆さまお目出とうございます。ねえ山本さん、ご紹介して。(伏見さんと初対面の挨拶)

雷蔵 とにかくね、われわれ歌舞伎出身の者は普段のままで、芝居すると何か具合が悪い。衣装をつけてはじめてこうキチッとするんだ。

山本 そうね、和服もいいし、洋服も好き、どちらでもいいわね。でも私個人としては洋服の方が好きだわ。

雷蔵 どうも両棲類は、時々叛旗をひるがえしてこまるね。(山本富士子さんは現代劇も時代劇も得意なので、雷蔵さんは、座談会のはじまる前から両棲類だとカラカッています)

山本 本当なんですもの、仕方ないわ。

若尾 着物っていいわね。

伏見 ほうら、味方が現われた。(笑)

若尾 但し、着こなしの上手な方の姿を見ることがよ。私なんか全然駄目。

伏見 ごけんそんでしょう。(笑)若尾さんは時代劇は何本位です。

若尾 「長崎の夜」と「酔いどれ二刀流」の二本だけ。それも時代劇といっても扮装だけでね。二本共、長谷川先生とご一緒だったんです。先生に「なるべく現代劇の時と同じつもりでやりなさい」って云われたので、余り意識せず終ってしまいました。

雷蔵 ところで、どうです。着物と洋服では、着物の方がいいでしょう。

若尾 そうねえ。(少し考える様子)いつも撮影に追われどうしでしょう。どうしても、洋服のほうが便利だし・・・。

伏見 オヤオヤ。

若尾 忙しくて楽しみらしい楽しみもないから、お正月用にはじめて和服を二枚つくったんです。女はやはり着物をつくる時は楽しいわ。

雷蔵 さすがは、大和撫子だ。(笑)

若尾 男の人の着こなしていない着物姿って魅力よ。でも、女はそうはゆかないわ。山本さんみたいに、着物を着こなせたらといつでも思うのよ。

山本 アラそんなことなくってよ。

和子 私の家のお母さんね、お三味線習えって、とってもすすめるの。困っちゃうわ。

伏見 是非習いなさい。第一、三味線くらいひけなくちゃ、映画のとき困りますよ。

和子 そうなの。それで嫌々、今年から始めようと思っているんです。

山本 撮影ではいろいろな衣裳を着るけれど、私達が自分で楽しんで着るものって割合少ないのね。私は普段はスラックスにセーター。

石浜 へぇー、案外だな。

若尾 そうよ、私も。だから、寝る時だけは毎晩いろいろ工夫して楽しんでるの。

石浜 どんなもの?

若尾 その日の気分によっていろいろかえるの。レースつきのパジャマとか支那風のネックのついているチカチカ光っているのとか、誰も見るひといないから、大胆なデザイン出来るでしょう。

雷蔵 ファンが一番聴きたいところだね。若尾文子さんはどんな姿で寝ているか?(笑)

若尾 アラいやだ。私、浴衣なんか着て寝ることほとんどないんです。和子ちゃんの寝巻って想像出来るわ。トレアドル・パンツでピンク色の袖なしの上衣ね。

和子 アラ、本当よ。当ったわ。どうしてわかるの?

若尾 感じでわかるわ。私、毎晩ちがったもの着ているの。