厳しさを感じる雷蔵さん

 “ねぇ、誰が一番早く結婚すると思う?” “お嫁に行くとしたら、やっぱりサラリーマンがいいなァ” ペチャクチャと雑談の花を咲かせていた仲間だった恭子さんが、私たちをアッといわせて雷蔵夫人になってしまってから、早くも一年たってしまいました。

 彼女の旦那さまが雷蔵さんだとはその頃、誰が想像したでしょう。私たちのあこがれである結婚、真先にゴールインしてしまった彼女を、ちょっぴりうらめしく思ったものの、「わァそれじゃ雷蔵さんに紹介してもらえるワ」とソワソワしたものです。それから雷蔵さんに無関心でいられるわけがありません。恭子さんの御主人って、雷蔵さんって一体どんな方だろう、一度おあしていみたいと思っていました。ところが今はおあいするどころか、ご一緒の映画に出させていただいているのですから、一年前には想像もしてみないことでした。

 はじめて雷蔵さんにおあいした時、とてもこわい方だと思いました。こんなはずじゃなかったのに、満足にお話することも出来ず、期待がはずれて拍子抜けがしました。そして残念ながら、今でもまるで後光がさしているようにまぶしくて「おはようございます」と云うのがやっとで、遠くから観察している有様です。

 雷蔵さんはそういう厳しさをかんじさせるお方なのです。社会の厳しさ、人間の厳しさ、芸の厳しさ・・・そういうものをその視線にあっただけで、後姿に接しただけで、感じさせるお方です。鋭い批判力とおどろくべき知識、確固たる信念を備えられた雷蔵さん。あこがれから尊敬に変った眼でおそるおそるかいま見ている私ですのに、みんなは雷ちゃん、雷ちゃんととても楽しそうに話しかけられておられます。それを見る度に、私も堂々と胸を張って雷蔵さんとお話しが出来るくらいに、芸の上でも、人間としても、向上したいと思っているのです。

『陽気な殿様』(1962年)

(よ志哉34号より)