女形がよく似合う 

 信長では線が細すぎた

二枚目どころがよい

雷蔵: やっぱり君は『紅顔無双流』とか『美男城』なんて二枚目どころは素晴らしいヨ。それから『一心太助』二本ともよかった。ズバリとタンカものは胸がすく。江戸っ子錦ちゃんには勝てんヨ。うん、ほめてつかわす。

錦之助: オイ、オイ、あんまり持上げるねえ。君にオダテられると、クスグッタいや。

雷蔵: お次は近松の“梅忠もの”の『浪花の恋の物語』をやるそうだが、僕もあれはやりたい企画の一つだった。

「梅忠」と「好色」って!

錦之助: そういう君の『好色一代男』は、僕もねらってたんだヨ。『浪花の恋の物語』は内田先生(吐夢)で四月ごろから開始する予定なんだが・・・。

雷蔵: 相手役は有馬稲子さんらしいが、きまっているのか。

錦之助: そうだナ。八、九分通りきまっているかも知れんナ。君の『好色ー』は何日ごろになる?

雷蔵: 『お嬢吉三』が終ってからだから、そのころになるかもしれないヨ。

錦之助: よし!そうなりゃ、カブキもので対戦だナ。信長でけんか出来なかったが「梅忠」と「好色」でけんかしよう。

雷蔵: うん、よかろう。それから下半期企画にはどんなのがある?

錦之助: 秋の大作では「源義経」をやるヨ。それから「油地獄」もやりたい。「成吉思汗」もやりたい。君は?

雷蔵: うん、「油地獄」は僕もやりたいナ。なかなか面白い企画があるネ。僕は・・・というと君に企画を取られるから秘中の秘だヨ。

錦之助: アレ、この野郎、ズルイぞ。

雷蔵: マア、マア、お互いにがんばろうや。

錦之助: イヤな野郎だなあ。