早く孫の顔を父に見せたい

一、結婚は早くしたい。

一、その理由は年老いた両親(本誌註・市川寿海丈)に早く孫の顔を見せたいということ。

一、しかし、まだ二十代だし、三十になるまでには結婚できるかどうかわからない。

一、なぜなら、まだ相手が見つからない。

 そして問題の結婚相手ということになるのだが、これについては、まず女優とは結婚しないと、はっきりつけ加える雷蔵だった。なぜ、女優は対象にならないのだろうか。その問題についての雷蔵の意見はこうだ。

「それはぼくはこう考えとるんや。女優さんが駄目な人間という意味ではないんや。ただぼく自身の場合はやね、両親も水商売の女の人は賛成してないし、ぼく自身もそうでない女の人の方が、ぼくに向くのではないかと思っているからや」

 というのだが、人間のことだし、もし女優を好きになってしまうこともあるかも知れないがという記者の言葉に、雷蔵は「そこやがな」と合づちを打って、また膝をのり出す。

「ところがや、ぼくという人間の長所も短所もそこにあるんや。ぼくはな、女優さんとは駄目やと決めたらな。どうしてもあかんのや。女優さんだとつい一歩も二歩も離れてな、こう眺めてしまうのや。(と下から上を見上げるしぐさをする)だから対象には絶対にならんと自分でわかっとるんだな、ぼくはそういうとこのある人間や」

 まことに明確な意志の強さを出す、この二枚目スターの感想は、そしてまた次へとつづく。

「大体なあ、女優さんというものは、みんな自我の強いもんやろ。そしてまた自我がなければ良い女優にはなれへん。問題はそこやがな。そうしたとこのある女優さんが家庭に入ったら、とりわけまた自我の強いぼくやで、よう上手にいかんと思うのやがどうだろう」

だが現に女優で結婚してうまくやっている人もいるから、いちがいにそうばかりとはいえないが、雷蔵は自分の場合は“絶対にだから水商売の人とはよう結婚しない”というのだった。日頃からいいたいことを平気でズケズケといい、時には自らを毒舌家とも称する雷蔵だが、これがちっとも嫌味でなくサラリと聞けるのも、これを人徳というかまことに不思議なスターが市川雷蔵だといってよいようだ。

 しかし、今日は問題が問題だけに、日頃の雷蔵もいささか慎重な構えだ。

「女優さんが駄目やなんていうたら、もうモテへんのとちがうかいな。ようそのへん書いといてや。これはあくまでぼく自身の場合の結婚のことやで・・・」

 そしてなお、大映の永田社長も日頃から水商売でない女性を貰えといってくれている。やはりそうなるのではないかというのが、この噂に対する雷蔵の答えだった。