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若君様 青春対談
お姫様

『鬼斬り若様』の市川雷蔵と八潮悠子

 

 

 

雷蔵: 雷蔵: しかし、八潮さんの早口は相当なもんですね。

八潮: ええ。それでとても困っているんですよ。大体時代劇では一テンポ落さねばならないのに、お姫様なんだからもっとゆっくりセリフを云うべきなんでしょう。だから相当ゆっくり云っているつもりでも、まだ早いって、安田先生に注意されるんです。セリフが早いと、自然動作も早くなるって・・・。まるでコマ落しのお姫様ね。(笑)

雷蔵: まさか、そうでもないだろうけれど。

八潮: この間、セットで初めて立廻りの撮影を拝見しましたけれど、大変なんでしょうね。見ているととても面白いけれど。

雷蔵: 立廻りは、これからまだまだありますが、重労働ですね。今度の役は何しろ立派な若様で、これまでの立廻りのように暴れまくるのではなく、品を落さぬようにおっとり構えて斬って行くんですから、見た眼にはあまり動いていないようでも、却ってやりにくいですよ。まる一日も続くとヘトヘトになってしまいますね。何だったら、立廻りも勉強して帰ったらどうですか。

八潮: いいえ、今のところ、他の勉強で一杯なんですもの。だってそうでしょう。お茶、お琴、踊り、本当に大変ですのよ、お姫様になるのは・・・。

雷蔵: その上、温泉に浸るんだから。

八潮: いやね、こればっかりは。

雷蔵: なあに、海水浴に行ったつもりでやればいいんですよ。心臓強く・・・。

八潮: そりゃ、雷蔵さんは声だけで、高見の見物だから、呑気そうにおっしゃいますけれど、本人の身になってごらんなさい。

雷蔵: いや、楽しみにしていますよ。