プレゼントの“投げ輪”を組み立てる雷蔵と若尾。子供たちの食いいるような目、目、目。

 その日の施設の子のお昼は「アルミのうつわに七分めのご飯。ゆでたてのホウレン草一つまみ。それに十センチくらいの魚の干もの一切れ」という献立。それでも子供たちは、おいしそうに食べていた。

 「“ゆかた”を着て、帯をしめたい」という、女の子たちの変わらぬねがいもかなえられないくらいだから“おもちゃ”にまでは予算がまわせない。

 「でも私のとこなんか、めぐまれている方です」と、園長さんは語っていたが・・・。

 この子たちは京都の徳義会という施設に収容されている。親が死んで孤児になったり、捨て子されたり・・・どの子も、暗い運命を背おわされて育った。

 一日五円のおやつ代(それも昨年の五月、国会でやっときまったばかり)を切りつめて、遠足の費用にあてているという、この子たち。初めて乗ったハイヤーで、後ろの車に手をふったり、「イナカノォ、バスワァ」を合唱したり、大変なはしゃぎよう。

 撮影所では「初春狸御殿」の豪華なセットをきょとんとながめ、忍術シーンに息をのんだ。

 この日は、いわば子供たちが“主役”。招待した雷蔵と若尾は“脇役”といった撮影所風景だった。