お二人の話ははずむ

雷蔵 それは現代劇だって同じことですよ、時代劇に“型”がある如く、現代劇にもそれなりの“型”がある筈です。そのうちに貴女も一本時代劇に出ると面白い。貴女の顔立ちは近代的かも知れないが、京都的なエレガントさもただよわせている。第一おしとやかだ。それに眼が非常に美しい。その眼のあつかいかたではいい芝居が出来ると思いますね。

金田一 ウフフ(手で顔を覆う)私おしとやかじゃないわ、家へ帰ればホウキを持たないまでもものすごいのよ。

雷蔵 これは驚いた。コワイんだな。顔の相でも貴女にそうあらわれているんだがなあ。

金田一 あやしいものね、雷蔵さんの易は・・・

雷蔵 そうでもないよ、ところで貴女は十代?

金田一 そうです。

雷蔵 未だ若いんだなあ、僕と七つ違う、干支は七赤か、七赤の人は・・・(祈るような手つきで易者の真似をする)ふだんはさりげなき所作をするが夜になると色を好み・・・(爆笑)

金田一 御冗談ばかりおっしゃって、お茶目で腕白な学生さんの様だわ。

雷蔵 これは手ひどい。拙者を愚弄しおるとはふとどきな、おなごといえども手のうちは見せぬぞ(チャーミングに眼を輝かせて斬る真似をする)

金田一 あーら断然素敵よ。

雷蔵 ガッカリだね。

金田一 お話している時の声とそうした映画でのセリフの声と全然違うのね、普段の時ももちろん素敵よ。

雷蔵 東京の女性にはかなわんわ、この女性は中々しっかりしている。シンが強そうだ、その情熱をもってすれば、必ずや大スタアになれる。(感心したようにしきりに首を振る)

金田一 (恥しそうに顔を赤らめ雷蔵さんをチラリと盗み見る)処で雷蔵さん『炎上』に出演された御感想は?

雷蔵 大変勉強になりました。主人公の溝口は内攻的な性格の人で、セリフのない芝居が多い、従って体の動きだけで意志を通じさせる点に苦労しました。

金田一 パントマイムみたいなのね。それから時代劇との違いって云うのか、変った点など・・・

雷蔵 別にありません。セリフが早いと云う事と、衣裳の着付が楽だと云う事位ですね、普段着つけていますから−(笑)

金田一 でもずっと学生服で通したんではないんでしょ。

雷蔵 そうです。だから余計に楽でしたよ、でも学生服を探すのには苦労しましたがね。五月でしたか東京の中野近辺の古着屋を探し歩いて二三着買って来たものです。

金田一 大変ね。きっと素晴らしい作品ができあがることでしょうね。楽しみにしております。今度のお仕事は?

雷蔵 『日蓮と蒙古大襲来』です。長谷川先生が僕と同じく髪を切られて真剣に取組んでおられるんで、長谷川先生に恥しくない芝居をしたいと思います。

金田一 それでは充分お体にお気をつけになってくださいね。今日は本当によいお話を伺いました。

雷蔵 貴女も元気で、今度は京都でお会いしましょう。

(58年8月20日発行 大映No.27より)