●すがお

 はじめて会ったのは『新・平家物語』で、雷蔵が平清盛を演じることになったときだ。テスト・スチールの彼は、これまでの二枚目とはガラリ変わり、たくましい武者ぶりを見せていたが、やがて現われた彼はセーター姿にぞうりばきという、きわめてザックバランないでたちで、質問に対する受け答えも明にして快、まことにサラリとしたものだった。

 これが素顔の演技か・・・とそのとき思ったが、以来今日までの彼を見ていると自然な態度であることがわかった。かなりの毒舌家で、セットでは思ったことをズバリというし、冗談をとばしてスタッフを笑い転げさせることもある。

 公私のけじめがキッパリついているのも見事で、夜遊びなど派手にやらない。だから雷蔵はつまらねえ。という評も出てくるが“長生きも芸のうち”なのだから、私生活をたいせつにするのはけっこうなことで、遊びほうけるより、この方がよっぽどむつかしい。根っからの“やくしゃ”なのである。

(大映グラフ68年2月号より)