安野球じゃ負けない

千代之介 おッ、おいでなさいましたネ。
雷蔵 実はネ、こんど野球チームを結成したんですよ。ぼくといっしょに仕事をしている俳優
さんやスタッフの人たちにメンバーに入ってもらって・・・
千代之介 そいつはしらなかった。で名前は。
雷蔵 “雷チーム”、生まれたてのホヤホヤですからね、ユニフォームもまだまだできてない
んですけど、背番号のところに雷さんをかいて、相手をおどかそうという戦法です。
千代之介 それで相手をおどかそうっていうんでしょうが、そうはいかない。(笑)なにしろ、うちは
監督がいい。
雷蔵 監督って、千代ちゃんでしょう。
千代之介 モチロンぼくさ(笑)インサイド・ベースボールでいきますよ。
雷蔵 いくらインサイド・ベースボールでも打てなきゃしょうがない。ぼくの背番号だって30番
ですからね。
千代之介 守備はどこ?
雷蔵 セカンドです。
千代之介 うちのチームは、鯉之助君(尾上)が投手兼主将で、里見浩太郎君も強打者として加
入してますから、強いですよ。
雷蔵 こっちだって日頃きたえたチャンバラで、スコンスコン打ちます。
千代之介 それでは受けて立ちますかな。
雷蔵 よし、コテンパンにやっつけてやろう
千代之介 なにをシャレしゃらくせえ。(笑)ぼくはシャレで負かす。
雷蔵 わがチームの野次将軍はぼくですからね。この間のゲームでも。相手方のピッチャ
ーばかりでなく球審をボロクソにやじってやった。
千代之介 ウム、そうか、ガミガミどなるからカミナリチームなのか。(笑)球審をやじるなんて雷
ちゃんチームもプロなみだネ。(笑)
雷蔵 これがホントのインサイド・ベースボールや。(笑)でもあかんわ、勝負は野球場でき
めましょう。お手並拝見せんことには、作戦がたてられません。

ファンに囲まれてバッターに声援をおくる市川雷蔵さん

ユニフォームもさっそうと東千代之介さん

千代之介 ぼくも実戦から遠ざかっていますからね。それは相見たがいです。
雷蔵 それはそうと、錦ちゃんの野球は上手や・・・。
千代之介 たしかに錦ちゃんチームは強い。なにしろ練習量が多いよ。ちょっとヒマがあると、すぐグランドで試合して
いる。よく急に相手チームがみつかるもんだと感心しちゃう。みんな好きなんだ。
雷蔵 でも、正直いうと、たまにやるもんやから疲れるわ。誰かにかわってもらって、ベンチにひっこむでしょ。退屈
だからつい野次ることになるんです。ぼくの野次封じは常時出場させること。
千代之介 監督さんが敵に通じちゃ困ります。(笑)しかし、それでもう安心だ。
雷蔵 どうして。
千代之介 雷ちゃんがコワイのは、バッターとして立ったときよりも、ベンチで野次ることだもの。(笑)
雷蔵 おっしゃいましたネ。(笑)