夕涼み対談

源平若武者くらべ

★錦之助さんの源義経、雷蔵さんの平清盛。
幼いころから仲のよかったおふたりが、映画の競演そのままに
今宵たのしく語るは、源平おしゃべり合戦です。


◆悲劇的な義経◆

市川: 錦ちゃん、いま「源義経」をやってるんか?

中村: うん。やりたいやりたいと思ってただけに一生懸命やってるんだけど、なにかすごくこわいような感じだね。きみ、「新・平家物語」をやるんだって?

市川: どうもそういうことになるらしい。

中村: 「新・平家物語」を単行本で読んだが、いいなあ。

市川: でも、平清盛という人間と、ぼくの体質とは外観からしてあまりにも違うでしょう「新・平家物語」をずっと読んでいたけど、ぼくが、清盛をやるなどとは全然思ってもみなかった。きみはやりたいやりたいといったのがやれて嬉しいだろうが、ぼくは全く考えてもいなかったんやから、嬉しいことは嬉しいがそれだけに人一倍努力せんならんね。

中村: きみのほうは天然色映画だしね。

市川: いろいろ(色色)苦労が多いよ。(笑)

中村: 苦労(源九郎義経)はこっちだよ。(笑)

市川: なあに平家、平家(平気、平気)(笑)−(負けず劣らず駄洒落の合戦に二人は大笑い)

中村: ぼくは義経が好きだなぁ。大体ぼくは悲劇が好きなんだ。義経の一生って悲劇的だからね。

市川: へえ、悲劇が好き?柄にもないことをいうね。

中村: オイッ!(と錦ちゃんは雷蔵さんにむしゃぶりつきます)

市川: わかった。きみは悲劇的や。哀愁を帯びてるわ。(笑)

中村: ばかもの!(笑)

市川: どうです、この額パラリと垂れた前髪は・・・。実に哀愁的だよ。(笑)

中村: わかった。もうかんべんしてくれ。(笑)きみに会うというんで、久しぶりにポマードをつけたんだ。

市川: 男のみだしなみでね。

中村: きみもずいぶんポマードをつけているなあ。(と錦ちゃんは髪にさわるふりして雷蔵さんの髪の毛をひっぱったので、)