僕は優等生B

思春

 思春期は?といわれても僕はいまだって思春期のつもりでいるんですから、かくべつに、これといった話もありません。しかし、十六、七になるとニキビはなやかになり、舞台にたつようになったら、化粧のせいもあるでしょうが、ニキビで困りはてました。他人にそのころ「お前の顔は佐野次郎左衛門(芝居に出てくるアバタづらの男の名)みたいだ」といわれていたし、自分でも、映画にはむかない顔だと思っていました。

 対女性関係も、自分の口からいうのもおかしな話ですが、品行方正でとおっていましたし、中学生のころでも、勤労動員の菜っ葉服で、その上空襲のさなかとあっては、好きな人どころではありません。いまの高校生みたいに、自由な生活ができるのなら、なにか面白い語り草もあったでしょうが、戦争の暗い谷間に思春期をすごした、悲しい廻わりあわせだったとあきらめています。それにしても僕は戦争だの、空襲だのという世の中はもう二度とこないようにと、思っています。