毒の無い毒舌

八尋: 雷蔵君は、人に聞こえた毒舌家なんで玉緒ちゃん、本郷君も、その毒舌にあてられていると思うんで、一つ、この辺で日頃のうっぷんを晴らしてもらいますか(笑)

本郷: 毒舌ということに異論はないな。

市川: 字で読むと、毒の舌でしょう。でも僕は毒はないと思うんですがね。嘘は云わんやろう。

中村: そうね。でもはっきり云うから、恥しい時があるわ。

市川: 僕は僕なりに正確に云うてる積りやけどな。それが毒舌に聞えるというのは、周囲が毒なんですよ。きっと。(笑)

八尋: 玉緒ちゃんなんか、雷ちゃんに何か云われてドキッとしたことある。

中村: 私、いつもドキッとする。(笑)

市川: 玉緒ちゃんは、僕にはあかんのです(笑) 外の女優さんはとも角ね。玉緒ちゃんは僕には頭が上らない。

中村: あのね、私小さい時から、ずーっと知っているから。

市川: あれはいくつぐらいやった。小学校行ってたかな。

中村: 小学校の一年生か、二年生ぐらい。

市川: その時分からですからね。お兄さんや、お父さん以外では、僕にはちょっと具合悪いな。(笑)

中村: ああこれは悪いなと思っていたことをはっきり云われるから、ドキンとするんです。

市川: それを毒舌とはこれいかに。(笑)

八尋: いわゆる、関西弁でいう、云いたいこと云いやな。毒舌とはちょっとちがうかも知れん。

本郷: え、違うんです。普通だったら、これ云ったら、気を悪くすると思って云わないことあるでしょう。ところが雷蔵さんの場合何度も顔が赤くなることありますよ、一番弱いとこをずばっと云われるんで。

中村: 本当ね。あとでゆっくり考えて、赤くなる。

八尋: どうも、あんまりうっぷん晴らしているようでもないね。(笑)ところで、悪いのは口だけ?

本郷: 手くせが悪い。(笑)

八尋: 雷ちゃん、手くせが悪いの。(笑)

本郷: 「濡れ髪・・・」の時ね。あれは、三尺物で、毛ずねを出したスタイルでしょう。僕毛深い方なんですよ。そしたら雷蔵さん、なんのかんのと言って、脛毛を抜くんです。

八尋: 妙なくせがあるんだな。

本郷: だから、セットでは雷蔵さんの傍によりつかなかった。(笑)

市川: 妙なくせですがね。僕は人をどついたり、首しめたりするくせがあるんですよ。もっとも、それは、自分の好きな人とか、意気のあった人にしかしない。もちろん、そういう人は、どついても、なにしても、絶対怒りませんからね。(笑)そういう、どついても怒らんの、撮影所に十人くらいいますよ。(笑)

八尋: どつかれるもんはいい災難やな(笑)