気になるほっぺた

八尋: 本郷君は、いま、顔につやがあるし、どっからどう撮ってもいいね。

本郷: それがね、そうでもないんですよ。このごろすごく感じるようになったんです。

市川: ほほおう。(笑)

本郷: いや、ほんと。今度ね、東京の田中(重雄)監督が、僕のデカバチは絶対撮らないっていったんですよ。僕もしめたと思った。僕、デカバチというの一番嫌いなんですよ、ほっぺたがふくれてるんで。で僕自分で云ったんですよ、恥ずかしいけど。バスト(上半身)が一番理想的なと云ったんですよ。

市川: 君は、そんなことばかり、早う覚えるね。(笑)ほっぺたが、ぷーっとふくらんでいると云うのは、自分が不摂生でふくらんでいるんだから、それをやせる工夫をしないでアップはいややいうのは、あかんな。全然間違うてる。

本郷: 僕だって努力してるんですよ。こりゃ薮蛇だったかな。(笑)

市川: 本郷君は割りとそういうこと気にするんだね。

本郷: 気にはしないけど、気がつくんです。

市川: やっぱり、美男は、そういうこと気にするんですかね。(笑)

本郷: 僕はほっぺたがふくらんでいるから要するに、頬の肥えているのがライトでとんでくれればいいんですよ。だからライトは単発がいいと自分でも思ってるんです。

市川: 単発?単発と来たね。(笑)

本郷: 要するに、ロケーションで云えば、夕日がしずむ一時間位前、ピーカン(晴天)で斜め後から、光線が来るような時ね。

市川: 逆に近いライトで一発というわけやな。

本郷: そう、だから、うす暗がりのシーンとかになると張り切るんです。(笑)

八尋: でも、その顔がはれてるったって、若さでいいと思うんだけど。

中村: 時代劇だったらね。

市川: 時代劇だったら、そうおかしくないけど、現代劇だとね、若さというか精悍さがなくなるんです。それでモゴモゴと、まるで舌がはれてるみたいな調子だから。

本郷: 始まった、毒舌が。(笑)

市川: やっぱり、体が肥えると云うことは舌も肥えると云うことになるんでしょうな。(笑)

本郷: ロレツが廻らないと云うのは、舌じゃないと思うんですよ。

市川: なんや。

本郷: やっぱり、舌の血液の循環が、悪いんですよ。(笑)

市川: 血がにごっとるのかな。(笑)

八尋: いや、血液よりも神経系統やな。

本郷: 神経ですか、使いすぎるのかな。(笑)

市川: 使うてたら、もう少しやせる筈やな。(笑)忙しい、忙しい云うてて、肥えてるの僕おかしいと思うな。

中村: 体質じゃないですか。

市川: 体質だって、そうはいかんね。やっぱり、忙しいというだけで、そう神経使うとらんのやな。

本郷: そういうことにしときましょう。(笑)