むつかしい方言のなまり

中村: 私、標準語がしゃべれないから、変になまって困るわ。

八尋: でも時代劇だと胡魔化せるんじゃないの。

市川: そうですね。

八尋: 本郷君は東京生まれ?

本郷: 生れは東京、幼稚園と、大学が東京で、小学校から高校までは岡山です。

市川: 高校は岡山の名門ですわ、岸信介が出たんだから。(笑)

本郷: 岡山というのは、アクセントにそうおかしいところはないんです。ただし、発声に変なくせがあるんです。だから、今だにアクセントは標準語でしゃべっているんですけど、発声が標準語にならないんですよ。岡山の方言というの、口つむって、云うんですよ。モソモソって。

市川: あ、そのくせ出てるんだな。「濡れ髪三度笠」の時、もごもご言うとったのは。それでわかった。(笑)

本郷: 結局、口を開けないでものを云うんですよ。だから、それを直そうと思って、努力して、大分直ったと思ってるんですが。

市川: いや、あんまり直っとらん。(笑)

本郷: でも、生れは東京なんで、アクセントは割としっかりしているんですよ。

市川: 生れは東京だってさ、五つやそこらで、方言もへちまもないよ。(笑)

本郷: でも、おやじと、おふくろが標準語しゃべっているでしょう。

市川: ああ、それで、ずい分違うな。

中村: そうですね。

本郷: 玉緒ちゃんも、実家に帰ったら京都弁ですか。

中村: そうです。

市川: うちでも、外でもどこでもだろう。(笑)

本郷: 雷蔵さんの芝居見ているとね、自分がすいこまれちゃうわけですよ。外から批評するなんて毛頭出来ないわけですよ。ただ一つだけ言えることは、アクセントですよ。時々アクセントが違うとこあるんですよ。

市川: ああ、なまりがね。

本郷: それだけですね。僕が雷蔵さんで気がつくところは。

八尋: なるほど、関西に育った人は、どうしてもぬけないね。

市川: 変になまるんですね。関西弁と標準語に共通のアクセントがあるんですが、そこがなまるんです。

八尋: これは、どんな年功を経た大スターでも、なおらないね。

市川: で、アクセントが関西弁と全然違うところはなまらないんですよ。