TOP HOT TV CINEMA BOOK DVD

 

映画録音技師ひとすじに生きて―大映京都六十年

草思社 (2007-03-02出版)
林 土太郎【著】
[B6 判] NDC分類:778.21 販売価:\2,310(税込) (本体価:\2,200)


〜稲垣浩、衣笠貞之助、斎藤寅次郎、伊藤大輔、黒澤明、三隅研次、森一生らの名監督、片岡千恵蔵、長谷川一夫、市川右太衛門、市川雷蔵、勝新太郎ら、きら星のごときスターとともに歩んだ60年の活動屋人生を、汲めど尽きせぬ裏方の苦労話をまじえて語る。
 活動写真のメッカ京都に生まれ育った著者が、日活、大映、テレビ映像と録音技師としてひたむきに歩んできた道を活弁口調をまじえて語り尽くした録音屋一代記。〜
裏方からみた大映京都60年
京の録音技師、回想録を出版
録音技師からみた映画について語る林さん(京都市右京区)

 京都の大映などで録音技師として映画製作に携わった京都市右京区の林☆(つち)太郎さん(85)が、このほど回想録「映画録音技師ひとすじに生きて−大映京都60年」を出版した。撮影の裏話、名優や名監督との思い出など貴重な証言が多く、裏方からみたもう一つの日本映画の姿が浮き彫りになっている。

 ■「羅生門」の秘話や名優の思い出記す

 林さんは活動写真好きが高じて1937(昭和12)年、15歳で日活京都撮影所録音部に入社した。無声映画からトーキー映画へ移っていく時代で、録音技術は新しかった。42年には、戦時下の企業統合により大日本映画製作株式会社(大映)の勤務となった。

 本書には、入社当初「笑う(省く)」や「ばらす(片づける)」などといった特有の業界用語に苦労させられた話、終戦後、インドネシア・セレベス島(現在のスラウェシ島)で捕虜となり、現地で劇団を結成したエピソードもある。

 復員後は大映に戻り、京都映画界の黄金期を体験した。名作「羅生門」(黒澤明監督)の裏話、二代目中村鴈治郎さんや長谷川一夫さんの思い出なども語られている。相手が大物俳優でも、せりふや発音の間違いを指摘することもあったという。

 録音技師としては53年の「水戸黄門 地獄太鼓」(荒井良平監督)でスタートし、「弁天小僧」(伊藤大輔監督)などの作品で活躍、94年の「RAMPO」(黛りんたろう監督)を最後に引退した。

 林さんは「日本映画の創成、全盛、衰退などを経験した者として、当時のことを書き残したかった。活動屋人生を知ってもらうことで、京都映画の復権につながれば」と話している。草思社刊。2310円。

 ☆=「土」の右上に「、」が付きます。(京都新聞電子版03/13/07より)