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溝口&雷蔵「新・平家物語」復活


 名匠溝口健二監督がデビュー翌年の市川雷蔵を主役に起用した映画「新・平家物語」(1955年)がデジタル処理され、18日に都内でお披露目されることになった。日本映画が劇場公開用にデジタル・リマスターされるのは初めて。ニューヨーク近代美術館(MoMA)で開催される映画祭にも出品が決定。スタンリー・キューブリック監督、ジャン=リュック・ゴダール監督の作品とともに、目玉の1本として上映される。

 「西鶴一代女」や「雨月物語」など多くの名作を残し1956年に死去した巨匠と、37歳の若さで惜しまれながら亡くなったスター。世界のミゾグチと雷蔵が唯一手を組んだ50年前の名作が、公開当時と同じ質の映像と音でよみがえる。

 劇場公開用のフィルムとしてデジタル修復されるのは初めてのケース。1作品で1500万円程度の費用がかかるため、これまでなかなか着手できなかった。

 今回、動いたのは歴史的・資料的に価値の高い映画フィルムの収集、保全などに努めている国の独立行政法人「東京国立近代美術館フィルムセンター」。費用の半分を出し、版権を持つ角川映画と共同でプロジェクトを立ち上げ、実現にこぎつけた。

 現在オランダで復元作業中で、18日に京橋の東京国立近代美術館フィルムセンターで行われる完成披露試写会でお披露目。ことし没後35年、映画デビュー50年を迎えた雷蔵。27日から都内劇場で始まる記念企画「市川雷蔵祭 艶麗」でも、デジタル・リマスター版が上映される。

 また、20日にリニューアルオープンするMoMAの開幕イベントの一環として1月末まで開催される映画祭への出品も決まった。70カ国からエントリーされた映画の中から、ゴダール監督の新作「選ばれた時」、故キューブリック監督の「突撃」(57年)と並んで目玉として上映される。角川映画の黒井和男社長は「各国の映画がある中、日本の映画が選ばれたことが何よりうれしい」と話している。

スポーツニッポン11月9日号より