大映京都の『忍びの者』(山本薩夫)に、新劇の岸田今日子が時代劇初出演している。彼女は最近舞台以外にも、映画やテレビで芸域を広めており、その進境はめざましいものがある。

 以下は、セット待ちの岸田今日子から、映画と舞台の演技のちがいなど、あれこれ聞いてみた。━写真は岸田今日子━

 ━ 映画の出演は何本くらい、また気に入っている作品は・・・。

 「『にごりえ』以来二十本くらいです。気に入っている作品は市川崑先生の『破戒』です。猪子連太郎の妻の役ですが、役も好きでしたし、市川先生のご指導も勉強になりました」

 ━ これまでの作品で失敗したと思われる役柄は・・・。

 「自分で失敗したと思うのは、佐伯幸三監督の『恐喝』です。そのころ私は舞台では、ボーイッシュな役ばかりしていたので、自分でも色気がないと思っていた。映画の中では、キャバレーの歌手にふんして、色気を出してほしいといわれたが、なんだかベタベタしすぎて、自分で見ても、気に入らなかった」

 ━ 映画と舞台の演技のちがいについて・・・

 「舞台は自分で間を作れますが、映画は監督さん次第です。小道具といえば誤解されるおそれがありますが、私自身は“素直ないい小道具”になりたいのです。監督さんのイメージ以上に動ければ、これにこしたことはありません」

 ━ 舞台で気に入っている作品は。

 「三島(由紀夫)先生演出の“サロメ”です。三島先生のイメージのサロメと、私の考えているサロメがぴったり一致しましたので、そのとおりやりました。いろんな意味で好きな作品です」

 ━ 映画の上でやってみたい役柄は・・・。

 「普通の女の人が、つきつめたような状態になった時をやってみたい。こんどの『忍びの者』のイノネ(忍者百地三太夫の妻)という女も、形の上では石川五右衛門を誘惑しますが、最初からみだらな女ではない、ほんとうはつつましい女なのだと思います。だから、このイノネという役もやりがいのある好きな役です」

 ━ 外国で好きなスターは

 「女優さんでは、ジャンヌ・モロー、『死刑台のエレベーター』『恋人たち』『雨のしのび逢い』みんな好きです。あんなつきつめた役をぜひやってみたいですね。ほかには、ビビアン・リーも好きです。男優では、モンゴメリー・クリフと、モーリス・ロネなんかです」 (デイリースポーツ・大阪版)

  

 

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