この夏、山本富士子の男装でクリン・ヒットを放った『人肌孔雀』の好評から、大映京都では再び山本、市川雷蔵のコンビに森一生監督以下の同じスタッフで、同傾向の『人肌牡丹』の撮影に入った。

 中身はお正月映画らしく一層の派手さを加え、白雪の加賀連山を背にした金沢百万石の城下へ乗りこんだ江戸の町娘が、お家騒動の奸臣を相手に大活躍する話。

 二人のほか、梅若正二、近藤美恵子、三田登喜子、鶴見丈二、岸正子らの若手が共演する。

 山本富士子の変化ぶりは前作よりもずっと多く、お小姓頭巾若衆姿の男装をはじめ、可憐な町娘、天蓋姿の虚無僧、牡丹の肌の鉄火女、「連獅子」の子獅子、妖艶の女師匠、高貴の姫君と文字どおりの七変化で、立回り、主題歌、踊りという大奮闘。彼女の出ないセットはないというぐらいである。

 初日のセットに現われたお富士さんは女やくざ緋牡丹のお雪の扮装、人入れ稼業輪島屋の家に秘密ありとニラんだお雪が、その裏をたくらむ親分(東良之助)の招きで盃を交すくだり。

 東京作品『白鷺』を撮るなり京都へ急行、すぐさまセット・インというあわただしさにお富士さんは「疲れてしんどいけど、でもこういうのも好きだから張切ってやります」と健気を披露する。

 「欲をいうともっと若衆姿で暴れたいんだけど、こんどは七変化が平均化されているんですよ。だから、セリフの調子とか動きとかで変化をもたせようと思います。前の『都会という港』でダブル・ロールやったけれど、あれは二人の違った人間だから難しかった。その点これは同一人物なのだからやりやすいと思います。グッと楽しく見ていただければ」と、文芸もの、娯楽ものを問わず、体当りでぶつかる彼女のいい意味での役者根性を明るく語る。

徹底的な娯楽作品に

雷蔵、山本の個性生かす

 酒に酔った親分が「おめえさんその気になりや、悪いようには」とお雪の肩へ手をのばすのを、ピシャリと払って「なにさ」と突きやる口調も伝法なやくざ言葉。しかし女やくざにしては少々お上品すぎるのも、種を割れば高貴の息女という役柄にあってはピッタリ。お富士さんの持味が生かされて痛快なワン・カットである。

 前作に引きつづいてメガホンをとる森監督は「雷蔵、お富士さんのイキのあった個性を巧くとらえて正月ものらしく目先の変ったハデなものにしたい。テンポも早く、明るく楽しいものに仕上げたい」と積極的な娯楽作として製作するという。そしてお富士さんについて「立回りにしろ、なににしろ吹きかえなしで一生懸命やるのはりっぱだ」と『花の講道館』で彼女のデビュー作を飾った森監督はその成長を楽しそうに語るのだった。

 

(スポーツニッポン 58年11月10日)

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