雷蔵、金田一の二度目のコンビ

 目下、渡辺邦男監督の『蛇姫様』に主演している市川雷蔵は、これに続いて大仏次郎原作の『若き日の信長』(大映スコープ)に主演することになった。これは、昨年の『炎上』で、意欲のほどを披露した雷蔵が、それ以上の野心を抱いて取組もうという格調高い時代劇大作である。

 大仏次郎の原作は、同氏が菊五郎劇団のために書き下ろした初めての戯曲で、市川海老蔵が青年信長にふんして、二十七年の初演以来、しばしば好評を博した同劇団の当り狂言でもある。映画はさらにこれをもとにして八尋不二が、画面の大型化にともない、スペクタクル場面なども加えた映画シナリオとして近来にない力作であるが、監督には森一生が当り、このところ続いた娯楽作品から脱して、その真価を世に問おうと意欲をもやしている。

 配役も大胆に新鮮さが取り入れられ、かって『新平家物語』で青年清盛を好演した市川雷蔵がふたたび時代劇の風雲児信長にふんし、奔放かつ豪快な青年のたくましさを見せるほか、相手役の弥生には金田一敦子が『遊太郎巷談』の好演を買われて共演。『弁天小僧』の青山京子、梨園の名門市川染五郎、現代劇の青春スター北原義郎、高松英郎、月田昌也らと多彩さを誇っている。

 市川雷蔵談 私がかって演じた『新平家物語』の青年清盛と、信長は実によく似ている。時代の新しい転換期に生れた一人の秀れた青年が、敏感にその動き進む方向を感じ取り、行動的にたくましく成長していく姿は、それだけで大変な魅力がある。ただ野性的な男といわれていた青年信長、彼の意表をついた行動も、彼にとっては計算された上での行動であったと思う。五年前菊五郎劇団が初演したときから、よくみているが、自分としては、この作品を格調の高い文芸大作として取組んでみた い。

打合せする右から高松英郎、森一生監督、北原義郎

デイリースポーツ・大阪版 02/09/59