お嬢吉三

1959年4月21日(火)公開/1時間21分大映京都/カラーシネマスコープ

併映:「夜の闘魚」(田中重雄/京マチ子・山本富士子)

製作 三浦信夫
企画 浅井昭三郎
監督 田中徳三
脚本 犬塚稔
撮影 今井ひろし
美術 西岡善信
照明 加藤博也
録音 海原幸夫
音楽 斎藤一郎
助監督 池広一夫
スチール 松浦康雄
出演 島田竜三(お坊吉三)、北原義郎(和尚吉三)、林成年(倉松)、浦路洋子(お民)、中村玉緒(お美和)、毛利郁子(お国)、小野道子(お加代)、本郷秀雄(三島の辰)、杉山昌三九(相生の五郎兵衛)、寺島雄作(当六)、浜世津子(お峰)、市川謹也(浅五郎)、水原浩一(鹿造)、伊達三郎(原田康之助)、清水元(伝法院の仁兵衛)
惹句 『サッと脱いだ腰元衣裳、下には鉄火の喧嘩仕度切った鯉口血しぶき上げる』『ふり袖みだして長ドス抜いて・・・男度胸の殴り込み』『タンカでのりこむ女装の雷蔵、サッとぬいだ衣裳の下は、喧嘩仕度の勇み肌』『お嬢姿でタンカを切って股旅姿でウットリさせて喧嘩姿で斬りまくる

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 「月もおぼろに・・・・」のセリフで有名な”三人吉三”が登場するが、黙阿弥原作の歌舞伎のストーリーには拘泥せず、自由に脚色された娯楽時代劇。江戸御牢を赦免になったお嬢、和尚、お坊の三人吉三は、その足で三人を牢にぶちこんだ張本人に意趣返しをし、そのまま江戸を後にした。気ままな東海道の旅に出た三人吉三は箱根の旅籠で、宿場女郎に売られてきた娘に同情、一肌脱ぐことになる。

 お礼参りをして江戸を売ったお嬢、お坊、和尚の三人吉三がひょんな事から江戸に戻って悪貸元をやっつける − と云う江戸時代に生きたチンピラやくざの痛烈きわまりないドライな行動を、新人田中徳三監督が若さに溢れたフレッシュな感覚で描く大映時代劇。黙阿弥の原作のもつ暗さを捨てて、多彩なキャストと色彩で描く江戸情緒豊かな娯楽作品になっている。出演はお嬢に人気最高の市川雷蔵。ほかに北原義郎、島田竜三、小野道子、浦路洋子、中村玉緒。( キネマ旬報より )

作品解説

★『お嬢吉三』は大映スコープ・総天然色で新人田中徳三監督がその若さに溢れた、フレッシュな感覚で描くものであります。

★溝口健二、吉村公三郎、市川崑、森一生監督らのチーフをつとめた田中監督がその精魂を傾注するだけに「江戸っ子祭」に匹敵する溌剌さが期待されます。

★『お嬢吉三』といえば河竹黙阿弥を想起しますが、今度の映画化に際しては、黙阿弥のもつ、薄暗い因果話、悪の讃美を一切捨て、江戸時代に生きた陽気なチンピラやくざの生態を痛快に、かわいたタッチで描くものであります。

★この主人公お嬢吉三には、最近とみに演技充実の市川雷蔵が扮し、若手時代劇スタア随一の魅力を大型画面に発散することになっております。なお、和尚吉三には現代劇スタア北原義郎、お坊吉三には島田竜三が扮し、雷蔵のお嬢吉三を中心に陽気に痛快に暴れ廻り、見る人を爽快にさせます。

★お嬢吉三をとりまく女性群に浦路洋子が料理屋の娘お民として出演、これとお嬢をはりあう女義太夫お加代に小野道子が扮し、恋の駆引きに火花を散らします。また、お嬢の幼馴染の指物師の娘お美和には中村玉緒が扮し、その可憐さをみることになっています。

★多彩なキャスト、異色ある顔合せが、美しい色彩をえて、爛熟した江戸情緒を盛りあげ、生活感情にみちた時代劇の生れることが期待されます。

★物語はお礼参りをして江戸を売った三人吉三が、東海道の旅の途中、ひょんなことから危険も顧みず江戸へ入り、悪旗本、悪貸元を痛烈にやっつけるというもので、三人吉三の若さにみちた、ドライな行動が魅了であります。( 公開当時のプレスシートより )

■ 略筋 ■

 江戸御牢を赦免になったお嬢、和尚、お坊の三人吉三は、その足で悪旗本原田庫之助と悪貸元伝法院の仁兵衛にお礼参りをした。この二人こそ三人吉三を牢にぶちこんだ張本人だったのである。江戸を売って東海道を旅に出た三人を追って、料理屋の娘お民と女義太夫のお加代が続いた。

 小田原宿で草鞋を脱いだ三人は、伝法院の追手にねらわれたが、危い所をお民に救われた。箱根宮の下で湯につかっていると、三人は江戸で馴染みの女衒の辰と出会った。辰は一晩三両の生娘を世話したが、男三人に娘一人。くじ引きすると幸運はお嬢に当った。辰に導かれて小屋に入ると、娘は抵抗してお嬢は困惑するばかりであった。突然若い男が飛び込んで来て娘は「倉松さん」と呼んで抱き合った。娘は借金のカタに辰にとられた身で、倉松は金貸し鬼伝から身にしむ折檻をうけた。

 後味の悪い三人はいたずらを企んだ。お嬢が女装して鬼伝のところに娘の証文をとりに行った。うっかり証文を渡した鬼伝は、毛ずねを出したお嬢の姿に驚いたがあとのまつり。証文によると、娘はお嬢の幼馴染みのお美和だった。あわてたお嬢は、辰を追った。

 ひとあし早く江戸入りした辰は、こともあろうに、お美和を仁兵衛に売った。お嬢らにお礼参りされて以来、悪旗本の覚えもめでたからずくさっていた仁兵衛は、ハタと膝を打って喜んだ。

 遅れて江戸入りしたお嬢は、お加代から、お美和が悪旗本原田のもとに妾奉公に出されることを聞いた。仁兵衛もお嬢の出現にしまりを堅くしたが、裏をかいたお嬢は忍び込んだ。お美和を救い出したが、仁兵衛一味に市中の木戸を閉ざされてしまった。お嬢はお美和の衣裳をまとうと、火事の半鐘をたたいた。木戸は開き、どさくさの中をお美和は逃れた。お嬢は仁兵衛一味に囲まれたが、かけつけたお坊、和尚三人吉三の大暴れに、原田一味も仁兵衛一家も倒れた。

 三人は江戸をあとに旅立った。嬉しげな倉松、お美和の後から、お嬢を追ってお民、お加代があとになったり、さきになったりした。( キネマ旬報より )

お嬢吉三

戸田 隆雄

 昨年末「弁天小僧」が好評だったので、もう一度当ててみようと考えての企画のようである。つまり、前例通り、雷蔵が厚化粧、満艦飾の女装で登場するのだが、今回は、八百屋お七ばりに、火見櫓で半鐘を乱打するところがクライマックスになっている。だから「お嬢吉三」といっても、黙阿弥のそれとはおよそかけはなれたもので、性格的にはむしろ前作「弁天小僧」に近い。

 具体的に言えば、可憐無垢の少女を暴力で犯そうとして果さず、妙な自己反省から、やがて同情、助力へと変化する心境は「弁天小僧」と大同小異である。従って、扱いようによっては前者同様、重厚な感じの作品になったであろうに、反対に、軽快な喜劇調に仕上げたのは、新人田中徳三監督が、先人の型(あまりにも伊藤大輔的な感傷と、その話術)を踏襲することを避けて、ワザと調子を変えたのか、それとも、世代の相違からしぜんに現われた結果であるか−

 ストーリーは、ただ、善と悪とを闘わせるために作ったとしか見えぬほど御都合主義で、人間関係のデタラメなことは、お嬢吉三を追いまわす二人の女性がどういう繋りの、どういう性情.の者か。一こうに分明でない例でもわかる。(キネマ旬報より)

詳細は、シリーズ映画、その他のシリーズ『歌舞伎の世界』参照。

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