遊太郎巷談

1959年1月14日(水)公開/1時間23分大映京都/白黒シネマスコープ

併映:「細雪」(島耕二/京マチ子・山本富士子)

製作 三浦信夫
企画 財前定生
監督 田坂勝彦
原作 柴田錬三郎(「週刊明星」連載小説)
脚本 八尋不二
撮影 杉山公平
美術 西岡善信
照明 中岡源権
録音 奥村雅弘
音楽 高橋半
助監督 黒田義之
スチール 西地正光
出演 浦路洋子(小百合)、金田一敦子(つう姫)、岸正子(お夕)、阿井美千子(お葉)、林成年(修次郎)、香川良介(三休和尚)、植村謙二郎(平手造酒)、清水元(後藤修理亮)、水原浩一(貝賀伊助)、石黒達也(是庵実は隅忠正)、綾英美子(腰元)、滝花久子(奥方ぬい)、荒木忍(水野越中守)
惹句 『裸身の姫君を小脇に抱いて、闇に躍る遊太郎の秘剣』『血を呼び恋を呼ぶ痛快雷蔵の一刀流霞斬り』『一刀流霞斬りの行くところ、恋を呼び、血を呼び、謎を呼ぶ

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柴田錬三郎の週刊明星連載小説の映画化。

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山根貞夫のお楽しみゼミナール

 『遊太郎巷談』をいま見ると、ここでの市川雷蔵にはどことなく“眠狂四郎”を思わせるものがある。むろん柴田錬三郎原作という点が暗示をもたらしていることはいうまでもないが、内容的にも明らかに“眠狂四郎”シリーズと重なっている。

 ・・・裸身の姫を小脇に抱いて、闇に躍る遊太郎の秘剣!血を呼び恋を呼ぶ痛快雷蔵の一刀流霞斬り!

 これは『遊太郎巷談』の惹句つまり宣伝コピーである。文中の“遊太郎”を“狂四郎”に、“一刀霞斬り”を“円月殺法”に替えれば、そのまま“眠狂四郎”シリーズの惹句になるではないか。エロチシズムとチャンバラの合体というあたりに、強烈な類似が感じられるのである。

 類似はドラマのなかに具体的に見られよう。市川雷蔵が意味ありげに、若い娘に部屋の花を夜中に活け替えるように命じたり、高貴な姫が色仕掛けで迫ったりすると、つい“眠狂四郎”と勘違いしそうになる。主人公の出生に謎があったり、行きずりに小函を渡されたことから陰謀に巻き込まれたりするのも、そっくりといっていい。

 調べてみると、似ているのは当然のことで、小説「遊太郎巷談」は1958年から「週刊明星」に連載され、小説「眠狂四郎」は1956年〜58年に「週刊新潮」に連載された。つまりは“狂四郎”から“遊太郎”が生み出されたのである。

 市川雷蔵はこのあと、1962年の『斬る』でも柴田錬三郎の世界に取り組み、翌63年にシリーズ第一作『眠狂四郎殺法帖』を撮る。

 ヒロイン金田一敦子は1957年にデビューした新人で、もっぱら現代劇で活躍した。これが初の時代劇出演になった。すぐあと雷蔵と『若き日の信長』でも共演している。ところが翌60年、ベッドシーンもあるきわどい役にぶつかって、いやになり、引退していまった。この女優とエロチシズムは相性がよくなかったわけである。(キネマ倶楽部・日本映画傑作全集ビデオ解説より)

★ 作品解説 ★

▽・・・1959年の輝かしい新春の銀幕を飾る『銭形平次捕物控・雪女の足跡』『人肌牡丹』に続いて大映京都が放つお正月映画第三弾大映スコープ『遊太郎巷談』は、大衆文壇の麒麟児・柴田錬三郎の評判小説を当世人気随一の市川雷蔵が、さらに新たなる魅力を求めて、監督田坂勝彦、撮影杉山公平の強力スタッフにより時代劇ファンへ贈る怪奇なフンイキとお色気に満ちた興趣満点、波瀾万丈の娯楽大作です。

▽・・・これは“週刊明星”発刊以来爆発的人気を集め、いまなお好評のうちに連載を続ける柴田錬三郎の同名小説を、連載と同時に大映が映画化権を獲得していたもので、スジは、高貴な身に生れたことも知らず、一介の浪人として飄々と市井に日を送る白顔の美剣士遊太郎を中心に、幕府転覆を狙うつう姫の活躍を描きながら、それを未然に防ぐという事件を背景にした剣と恋のなかに異色ムードを盛り込んだ本格的時代劇です。

▽・・・配役は人気も演技も向上めざましい大映の秘蔵ッ子スター市川雷蔵が、遊太郎とその父輪王寺の宮の親子二役で、さらに問題のつう姫には大映現代劇のホープ金田一敦子が扮して時代劇に初出演するほか、浦路洋子、岸正子、阿井美千子、林成年の青春スター群に、植村謙二郎、香川良介、石黒達也、清水元、寺島雄作、水原浩、滝花久子らの芸達者が大挙出演、また綾英美子、松尾親代の新人もこれに混って豪華な顔触れをみせています。

▽・・・なおスタッフは、製作三浦信夫、企画財前定生のほか、前記の柴田錬三郎の原作をベテラン八尋不二が脚色、好評の波に乗る田坂勝彦監督が名匠杉山公平の流麗のカメラを得て、野心のメガホンをとるという大作にふさわしい精鋭の陣容です。(公開当時のパンフレットより)

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★ 略 筋 ★ 

 真紅の大太刀は一の宮神社の勧進元あてに、大前田の親分から届けられる。父の佐五親分が吉兵衛一家に暗討ちにあって一年後の今日も、お葉とお夕の姉妹が継いだ佐五一家に、また真紅の大太刀が届けられた。途中を吉兵衛一家が待ち伏せて、奪いとろうとした。乱闘。残るは数人になったとき、浪人遊太郎が現れ、お夕たちを救ったのだった。彼はしばらく一家の食客になった。が果し状をつけた吉兵衛一家を全滅させると姿を消した。用心棒の平手造酒は彼を生涯の好敵手と決め、江戸へ追っていく。

 遊太郎は飯倉明神境内で、役人から追われる修次郎という男から美しいチギ函を受け取った。修次郎は古屋敷に住むつう姫という謎の美女につかえる若者である。小函には伝馬町の牢屋の地図が入っていた。

 −遊太郎は幕府大目付後藤修理亮の邸に身を寄せていた。彼は上野輪王寺の宮と将軍家の娘の間に生れた若宮だった。彼の佩く香木の刀はそれを物語る。両親は死に、修理亮のもとで育った。修理亮の娘小百合は彼に恋し、両親もそれを許した。お夕も彼を恋し、三休和尚に連れられ、屋敷を訪れた。−

 遊太郎をつけ狙っていた平手造酒は夜鷹に化けたつう姫から操とひきかえに、助力を頼まれたが、修次郎がさえぎった。つう姫は幕府の取潰しにあった備前赤松の大名の娘である。天満与力大塩平八郎の門人隅忠正という男が現れ、幕府転覆のため行動を共にしようといった。例の伝馬町の牢の見取図を忠正一党は狙ってい、それは幕府の政策上毒殺された宮を弔うため用意された大伽藍の建立資金のありかを示す絵図なのだ。遊太郎を知る三休和尚は、昔、輪王寺の僧であり、その寺の住職になるはずだった。−修理亮の駕が襲われ、チギ函は奪い去られた。

 若宮の生れた御陰殿跡で、美しい天女が寄進の額に応じて秘仏の前で舞を見せるという噂があった。遊太郎が赴くと、噂のとおりなのだ。忠正一味の遊太郎おびきだしの手だった。天女はつう姫である。彼を刺そうとした姫を抱えて、彼は森へ逃れ、彼女の行動が利用されていることを説く。

 伝馬町に火事が起り、焼跡で輪王寺若宮の旗を立てた一団が被災者に施米を行った。牢獄地下の黄金を狙う忠正一味の所行である。つう姫が若君に扮していた。まだ彼らとはなれられぬのだ。埋蔵金はすべて御陰殿に運ばれた、が、町奉行配下の包囲陣が迫っていた。忠正とは奥医師の是庵であり、その地位を追われたウッ憤ばらしに陰謀をはかったのだ。あやつられたと知ったつう姫は忠正を刺し、自殺した。造酒は遊太郎と対するうちに喀血した。遊太郎はこときれた姫と斬死した修次郎の手を互いに握らせてやった。−遊太郎はいずれともなく去っていった。( キネマ旬報 より )

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 集英社より昭和三十四年三月刊行の「修羅の巻」、四月刊行の「魔女の巻」、九月刊行の「夢幻の巻」を文庫刊行にあたり「遊太郎巷談」として一冊にした。

 小太刀の秘法霞斬りの名手・遊太郎と剣鬼・平手造酒との宿命の対決。遊太郎の香木刀が招きよせる凄惨な剣戟と官能の罠。意表をつく殺法に清新なエロチシズム・・・・・。陰謀と恋をからめて、舞台は大利根の修羅場へとなだれ込む。爛熟腐敗した徳川末期の世相を背景に、痛快無比な時代劇長篇。( 集英社文庫 「遊太郎巷談」より )

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