大菩薩峠・竜神の巻

1960年12月27日(火)公開/1時間30分大映京都/カラーシネマスコープ

併映:「三兄弟の決闘」(田中重雄/長谷川一夫・弓恵子)

製作 永田雅一
企画 松山英夫・南里金春
監督 三隅研次
原作 中里介山
脚本 衣笠貞之助
撮影 今井ひろし
美術 内藤昭
照明 岡本健一
録音 大角正夫
音楽 斎藤一郎
助監督 西沢宣匠
スチール 小牧照
出演 本郷功次郎(宇津木兵馬)、中村玉緒(お豊)、山本富士子(お松)、近藤美恵子(お玉)、三田登喜子(お杉)、藤原礼子(深雪太夫)、片山明彦(金蔵)、中村豊(浪士)、見明凡太朗(裏宿七兵ヱ)、村上不二夫、山本弘子(お鶴)、清水元()、真塩洋一(与八)、須賀不二男、小堀阿吉雄(酒井新兵ヱ)、石黒達也(植田丹後守)
惹句 『龍之助盲いて心眼ひらき、兵馬追って剣を磨く愛憎流転、相対峙する竜神の森』『狂乱の炎は夜空を焦し、竜神の瀧は耳を聾す死の断涯に再び躍る龍之助、兵馬宿命の対決』『流転又流転愛欲の業大を断って、竜神の無明地獄に心眼冴える音無しの構え斬るか兵馬の復讐剣

[解 説]

 大映が61年の新春のスクリーンを飾る大映スコープ総天然色『大菩薩峠・竜神の巻』は、中里介山不朽の名作の映画化として、今秋の話題を一手にさらった『大菩薩峠』の大好評に応え、その第二部として同じスタッフ、キャストで製作するもので、雄渾のスケールと他社の追随を許さぬすぐれた風格は、大映ならではの興味溢れる最高の黄金時代劇大作であります。

 とくに本篇では、魔剣音なしの構えで波乱を呼ぶ竜之助が、後半で天誅組に加わったため、爆破で両眼を失い、盲目の剣士として登場、ラストでは竜神の森で、再び兵馬と宿怨の対決をみせるというもので、失眼してますます鋭さを加えた竜之助の妖剣の冴えに最大の魅力が期待される一篇です。

 キャストは主人公机竜之助に市川雷蔵、薄倖のヒロインお豊に中村玉緒、宿敵竜之助を狙う宇津木兵馬に本郷功次郎、悲運の娘お松に山本富士子と、待望の四大スターが絢爛の顔合せを見せるほか、近藤美恵子、三田登喜子、藤原礼子、片山明彦、中村豊ら豪華スターが新たに活躍、また見明凡太朗、村上不二夫、山本弘子、清水元、真塩洋一、小堀阿吉雄、須賀不二夫、石黒達也といった多彩な顔ぶれでがっちり演技陣を固めています。

 なおスタッフは永田雅一社長がみずから製作に当り、企画は松山英夫、南里金春が担当、またシナリオは衣笠貞之助が中里介山の名作を脚色、監督はここもと好評の波に乗る三隅研次が、今井ひろしのカメラを得て野心のメガホンを握るほか、録音大角正夫、美術内藤昭、照明岡本健一といったこの大作をものにするにふさわしい粒選りの精鋭であります。(公開当時のプレスリリースから)

 

[ 物 語 ]

 京の島原に宿命の対決を交えた机竜之助と宇津木兵馬は死闘数合、ついに力つき、お互いを霧の中に見失ってしまった。それからは、仇敵竜之助を血眼になって求める兵馬のたゆまぬ探索がまたも続くのだった。

 裏宿の七兵ヱは、お松が島原に売り飛ばされているのを知って、彼女を身請けするために廓に行く途中、傷ついた兵馬を認めてこれを伴いお松のいる本津屋に赴いた。七兵ヱは、先刻まで兵馬が斗っていた竜之助こそ、大菩薩峠でお松のお爺さんを真っ二つに斬った浪人であることを初めて彼女に知らせた。お松から親切に傷の手当てをうけた兵馬は、ともに仇きと狙う相手が同じ竜之助であることから、一そう激しい復讐の念を燃やすのだった。

 竜之助は、ふとしたことから大和国八木の街道で薩摩の浪人酒井新兵ヱと剣を交えたが、たまたま仲裁に入った三輪の里の植田丹後守のすすめで丹後守の屋敷に逗留することになった。はからずも彼は、関の茶店で、悪いカゴ屋にいじめられていた、死んだお浜によくにた女、お豊がこの家にいるのを見かけた。彼女はあの時の男と琵琶湖で心中を図ったが、自分だけは助けられ、旅籠を営む伯父を頼ってきたが、この土地の藍玉屋の放蕩息子金蔵に追いかけられ、この屋敷にかくまってもらっているのだと竜之助に語った。その後も金蔵はお豊に執拗につきまとい彼女に結婚を迫って無体を働いたが、竜之助にいつも遮られて果たさなかった。お豊は竜之助を関東へ向うときには自分もいっそ江戸へ一緒につれて行ってくれと懇願するのだった。

 一方竜之助を追う兵馬たちは、八木の宿まできたが、お松が病気になったため兵馬が看病し、七兵ヱは早い足にものをいわせ、毎日何十里と歩いて、その行方を探し求めたが、七兵ヱが竜之助に立ち合ったのは、お豊を伴い馬で墨坂峠を東に向うところだった。ところが、この時お豊を奪い返そうとする必死の金蔵は、鉄砲で彼女の馬を狙い、わずかのすきにお豊を山中深くつれ去ってしまった。“所詮、縁なき女”とあきらめた竜之助は伊賀の上野に宿をとった。七兵ヱはすぐさま引き返して兵馬にことの次第を告げ、ともども丹後守の屋敷を尋ね竜之助の情報をつかんだが、丹後守は竜之助はまれにみる剣の使い手であり、彼に打勝つためにはわが家の秘伝の一手を兵馬に授けようと申出るのだった。

 竜之助は上野の旅籠で、隣室にいた天誅組の志士たちが横暴がもとで太刀を交えたが、いつかの薩摩浪人酒井新兵ヱが一味の中に居合せたことから、天誅組の総裁松本奎堂に引き合わされ、同志に加わるようにすすめられた。彼は遊山がてら彼らと行動を共にしようと答えた。しかし竜之助の前途には、のろわしき運命が待ちうけたいるのだった。というのは、大敗を喫した天誅組の背後には、藤堂藩、彦根藩などの追手が迫り、竜之助も巻添えを喰って失明の憂き目をみることになったのである。志士達と共に樵小屋に潜んでいるところを樵の密告で山狩りに出合い小屋もろとも爆破され、もとより勤王も佐幕もない竜之助までも両眼を失ってしまうという破目になったのである。しかし、盲目になった竜之助は、追手の侍を一人斬り、二人斬りしながら、みずから血路を開いて山中深く生きのびて行った。討伐隊とともにかけつけた兵馬がたどり着いたとき、あたりには竜之助の姿は見えず、兵馬は歯切して口惜しがるのだった。

 その騒動にまぎれお松は藤堂藩の人夫黒滝の鬼蔵にさらわれ伊勢山田の遊女に売り飛ばされようとするところを、三味線流しのお玉とお杉に発見され、彼女らの機転で通り合せた宇治山田の名物男米友とそのムク犬の働きによって助けられた。

 竜之助を追って兵馬が紀州の竜神村にたどりつき、落着いた先の室町屋こそは、お豊が墨坂峠で無理やり連れ去られた金蔵といまは夫婦養子となって営む彼らの旅籠であった。お豊が兵馬の口から、復讐のため竜之助の命を狙ってここまで追ってきたのだということを聞いた彼女の驚きは尋常でなかったが、夫の金蔵はお豊が若いお客の部屋に長く留っていることを強くなじった。

 そんなとき、竜神の森の上にはどす黒い雲が不気味にたなびき始め、滝壺の修験者たちは不吉の前兆を感じた。お豊は水垢離をとって竜之助の無事を祈るとともに、籠堂でばったり出合った竜之助に、兵馬が身近に追っていることを告げ、どうか自分と一緒に江戸へ逃げてくれと哀願するのだった。そして竜之助の両眼をみて愕然としたお豊は、急いで荷物を取りまとめようと家に帰ったが、金蔵はこれを知って嫉妬に狂った。金蔵はお豊の襟首をつかんで引きづり出刃包丁をふり上げたが、はずみで蹴飛ばした行灯の火は障子から天井に燃え移り、見る見るうちに一面火の海となった。髪を乱して裏山へ駆けのぼるお豊、出刃をかざし、悪鬼の形相で追う金蔵。この騒動で、兵馬も竜之助が竜神の滝近くにいることを知り、藤堂藩と力を合せて山狩りの手勢をくり出した。

 狂ったように半鐘が鳴り、村の火は次第に山まで移って、夜空をこがした。お豊が籠堂にいる竜之助のもとにたどりついた時、金蔵もお豊を追ってきたが、竜之助の鋭い一閃を浴びて真二つに。お豊に手をとらせて山中深く逃げる竜之助、追う兵馬が、再び太刀を交えたのは、竜神の滝近くにそそり立つ断崖の上である。氷のように冷たい竜之助をじりじり追詰める兵馬の額に脂汗がにじみ、捨身の決心の色が浮かぶ。一瞬どどっと崩れ落ちる竜之助の足許。“あっ”思わず顔を掩うお豊。半鐘とほら貝が狂ったように全山にこだまする。(公開当時のプレスリリースから)

『大菩薩峠』全20巻は、富士見時代小説文庫で読める。シリーズ映画 、その他のシリーズ” 「大菩薩峠」参照。

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