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打合わせする市川雷蔵と勝新太郎

 大映京都では、近く撮影を開始する天然色、ワイド『薄桜記』で、市川雷蔵と勝新太郎が久方ぶりにコンビとして顔合わせするというので話題になっている。

 これは五味康祐の評判小説を原作に、伊藤大輔が脚本を執筆、森一生が監督に当るが、雷蔵は丹下典膳、勝は堀部安兵衛に扮し、相反する二剣士の宿命的な対立と、これにからまる武門の意地、男の友情、さらにひとりの美女をめぐる愛情の相克などを描く格調高き時代劇である。このほど最初の打合わせで顔を合せたふたりに、いろいろ作品について聞いてみた・・・。

 

演り甲斐は十二分

・・・雷蔵は「はじめはまことに明るく、分別もある武士でだが、最愛の妻がはずかしめを受けてからは、人間的な悩みに苦しむ。精神的には許せても、肉体的にはどうしても許すことが出来ないという内面的な相克から、人間がスッカリ変ってしまうというあたりは、俳優として大いに演り甲斐を感じる。前半はつとめて明るく、夫婦の甘いムードえを出し、後半はうって変って冷酷な男にするつもりだ。重量感のある格調の高い時代劇になるだろう」と語った。

ズバリ決定打を狙う

・・・一方の勝は、いま『月影兵庫』に出演中であるが、前作の『鉄火牡丹』が好評だった後だけに、決定打不足に悩む勝にとってはこの一作にかける期待は大きい。

・・・中山安兵衛は堀内一刀流の使い手で、フト知り合った千春に思いをよせるが、典膳のもとに嫁ぐと知り、堀部家のムコ養子となる。しかし最後の討入りに当っては、茶会の日どりを瀕死の千春の口から聞いて、無事本懐をとげるという・・・。

三角関係も甚だ複雑

・・・勝は「共演とはいうものの、余りにも雷蔵くんの役が魅力的なので、これに負けないよう大いに頑張って、せめて互角の芝居にまでもってゆきたい。ふたりが同じ画面で顔をあわせるところは少ないが、この映画を貫くものは、ふたりの友情とか武士の意地というもので、千春をめぐる三角関係もはなはだ微妙だ」と大いに意欲のあるところをみせていた。