影を斬る

1963年3月1日(金)公開/1時間22分大映京都/カラーシネマスコープ

併映:「定年退職」(島耕二/本郷功次郎・藤由紀子)

企画 財前定生
監督 池広一夫
脚本 小国英雄
撮影 武田千吉郎
美術 西岡善信
照明 加藤博也
録音 奥村雅弘
音楽 斎藤一郎
助監督 遠藤力雄
スチール 小牧照
出演 嵯峨三智子(定・君竜)、坪内ミキ子(和子)、成田純一郎(伊達忠宗)、松本錦四郎(小野伊織)、小林勝彦(戸田帯刀)、真城千都世(お広)、稲葉義男(伊達将監)、井上明子(お吉)、高森チズ子(お文)、毛利郁子(〆香)、藤原釜足(笠原左内)、大辻司郎(川上平馬)、千葉敏郎(村上軍十郎)、荒木忍(伊達安房)、山路義人(多田頼母)
惹句 『飛剣おどれば影二つ花の笑顔の剣の冴え雷蔵剣士の武者修業』『武士が勝負に賭ける時武士が女に燃える時迷いの影も真っ二つ』『にっこり笑って秘剣ふるえば、影はたちまち真っ二つ雷蔵得意の柳生流

かいせつ

 『天国と地獄』の小国英雄のオリジナル・シナリオを、『地獄の刺客』の池広一夫が監督した時代喜劇。撮影は『続・悪名』の武田千吉郎。

☆ この『影を斬る』は、市川雷蔵が伊達六十二万石青葉城随一のプレイボーイ侍に扮し、新婚初夜から嵯峨三智子のナギナタ自慢の奥方にさんざん攻め立てながらも、遂に立派に修行を積んで、彼女をやっつけるという大変変った、しかし愉快な内容の明朗時代劇、男女の機微を心得、しかも剣の颯爽さも心得た小国英雄の心憎いオリジナルシナリオによるものです。

☆ 内容は、お城勤めはそっちのけで、お忍びの主君まで誘い出して遊びにふけっている侍が、仙台随一の美女を女房に迎えて相好を崩したのも束の間。この若奥様、大変なナギナタの名手で、新婚初夜もすまさぬうちに夫と立ち合って、さんざん彼をやっつけてしまいます。この屈辱に耐え兼ねた主人公は、江戸で剣術修行を志すが、持ち前の性質から色の修行と半々で、なかなか女房を負かすまでには至らない、というもの。これに、やはり、将軍の娘を奥方に頭の上らぬ主君が応援、また、女房と瓜二つの江戸の芸者、主人に高利で金を貸す用人などがからみ、藩士達のサラリーマン的勤務ぶりも織り込まれて、愉快なドラマが展開します。

☆ 出演者は、主人公、井伊直人の市川雷蔵の奥方にはさきに婚約発表したばかりの嵯峨三智子が扮し、手なれた呼吸で、この愉快なカップルを演じる他、藩主忠宗、その奥方和子には、成田純一郎、坪内ミキ子の清新コンビ、また、小林勝彦、松本錦四郎、大辻司郎、真城千都世、井上明子、高森チズ子らの若手、藤原釜足、山路義人、荒木忍、稲葉義男らの芸達者、また牟田悌三がナレーションを担当するなど、多彩なメンバーが顔をそろえています。

☆ スタッフは、ベテラン小国英雄が軽妙なタッチでオリジナルシナリオを担当し、監督は、シャープな演出で感覚的喜劇を狙う池広一夫が意欲のメガホンをふるっています。それを助けて、撮影武田千吉郎、美術西岡善信、録音奥村雅弘、照明加藤博也の精鋭メンバーぞろいです。(大映京都作品案内717より)

 

 

ものがたり

 奥州伊達藩六十二万石の居城、青葉城。井伊直人は剣術指南役だが、仕事はそっちのけで、将軍の娘の奥方に頭の上がらぬ主君伊達忠宗を誘い出し、夜は城下の飲屋、昼は天守閣で 昼寝というつとめぶり。ところが、この直人のところに押しかけ女房にやって来たのが、仙台小町と言われる家老の娘定。だが喜んだのも束の間、定は婚礼の晩に直人に試合を所望。忠宗夫妻以下、婚礼の客立合いの下に直人と定は立合った。ところが、勝負は無残、直人は定にさんざんやられてしまった。

 翌日、用人の左内を連れて江戸へ修行に旅立つことになった。しかし、持前の気性は直らず、専ら色の修行ばかり、半年で帰国したが、またもや定にやられて忽ち江戸に逆lもどり。ところが一夜、江戸留守居役のお伴で料亭に遊んだ直人は、芸者君竜をみてびっくり仰天した。定とは全く瓜二つ。定の変装ではないかと、直人は早速国許に急行した。しかし、直人の道場では稽古着姿も勇ましい定が、ぶんぶんナギナタを振り廻していた。がっかりした直人はまたもや江戸へ逆戻り。

 ある日、君竜と二人で料理屋からの帰途、数人の浪人者に襲われた。藩の同僚に助けられたからよかったものの、直人の徹底した頼りなさに、すっかり愛想をつかした君竜は、直人の精進を祈って去った。呆然と考えこんだ直人は、突然柳生道場へ住み込むと左内に告げて左内のもとを去った。

 それから数年、青葉城では、直人と定の御前試合が行われていた。柳生流免許皆伝を得た直人は、圧倒的な強さで定を破った。一番喜んだのは城主忠宗だった。その夜初めて夫婦の誓いをかわした直人は、君竜が定であることを知った。すべては、直人の素行を改めさせようとした家老将監、定親娘の仕組んだことだったのだ。

 一方、藩主忠宗の寝室でも奥方和子は、普段の自分の行状に深く反省していた。これからは何事も夫に仕えることを誓った。伊達藩はやっとこれで、正常な夫婦関係にもどったのであった。翌日、天守閣できのうのつかれのためか、忠宗公と直人の大いびきが、高らかにかなでられていた。( キネマ旬報より )

                               影を斬る                                 市川沖

 亭主飼育法時代劇版。プレイ・ボーイ侍の市川雷蔵を嵯峨三智子の才色兼備の賢夫人が立派なサムライに仕立てあげる。“又四郎もの”などで軽妙な役をこなしている雷蔵にはうってつけの題材。“ジャジャ馬馴らし”のパロディもまずは無難。

 だが題名のマズさまは致命的。雷蔵のもう一つの当り役、『斬る』などで剣に生きる武士をテーマにしたものと明朗な時代劇がこの題名ではまったく混乱して来る。これではどちらの客も失う。まったくマズイ題名だ。

興行価値:当世流行の残酷ものめいた題名が、コメディがかった内容とウラハラで損をした。イメージをこわす下手な作戦。興行価値は50パーセント台にとどまる。( キネマ旬報より )

 

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