若親分喧嘩状

 

1966年1月3日(月)公開/1時間23分大映京都/からーシネマスコープ

併映:「新・兵隊やくざ」(田中徳三勝新太郎・嵯峨三智子)

企画 斎藤米二郎
監督 池広一夫
脚本 高岩肇
撮影 森田富士郎
美術 加藤茂
照明 美間博
録音 海原幸夫
音楽 斎藤一郎
助監督 国原俊明
スチール 三浦康寛
出演 高田美和(早苗)、江波杏子(トクーズ姫)、小山明子(喜久松)、滝田裕介(山本健)、内藤武敏(猪之原勘蔵)、戸浦六宏(川上中佐)、島田竜三(虎松)、五味竜太郎(熊田大尉)、三島雅夫(木島剛)、北龍二(高遠弥之助)、水原浩一(仙之助)、戸田皓久(竹村少佐)、深見泰三(朝日造船社長)
惹句 海軍じこみで頭がきれる大陸じこみでドスがきくただじゃすまないなぐり込み』『殺し屋、利権屋、裏切り野郎、まとめて息の根止めてやる!海軍仕込みの殴り込み!』『サッと投げ出す喧嘩状!女ばかりか男も惚れる腕は自慢の海軍仕込み!』

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■ 作品解説 ■

 『若親分』(総天然色)は、好評の前ニ作『若親分』『若親分出獄』の後をうけて、任侠の快男児南条武を主人公とした、いわば「若親分シリーズ」の第三作目、市川雷蔵の颯爽な活躍ぶりを描く痛快篇です。

 海軍士官から突如やくざの親分になり、さらに軍服姿で海軍鎮守府になぐりこみをかけたまま大陸へ去った南条武は、風雲急を告げる満蒙の天地より蒙古の王女を連れて、まず東京から横浜に活躍することになります。すなわち、一部陸軍の過激派将校と結託して、革命にことよせて私欲を肥やし、日本を外国の食い物にさせようとする新興やくざを相手に、任侠一すじの正義の斗いをいどみ、さらに海軍士官軍服姿で陸軍の将校たちと対決するなど、随所に痛快な見せ場を展開。最後には年末の雪の降りしきる港の大桟橋で、痛烈な喧嘩状をたたきつけた相手のやくざたちに、海軍仕込みの奇襲戦法を応用して、ただ一人ですさまじいなぐりこみを見せるものです。

 配役は、市川雷蔵の快青年南条武に、高田美和が昼は救世軍、夜は新聞の活字拾いを手伝う清純の娘、江波杏子が蒙古王朝の姫、小山明子の凄艶な芸妓になって色どりを加え、さらに滝田裕介の正義派記者、内藤武敏の新興やくざ、戸浦六宏、五味龍太郎らの陸軍将校、島田竜三のやくざらをはじめ、北竜二、水原浩一、戸田皓久、深見泰三、南部彰三、高杉玄、香川良介らの芸達者で、派手な顔ぶれです。

 このシリーズの第一作以来、快調のメガホンを続けて来た池広一夫監督に、森田富士郎の野心的なカメラが組み、高岩肇のオリジナル脚本で、録音海原幸夫、美術加藤茂、照明美間博、編集谷口登志夫と、若さに燃えたメイン・スタッフによる出来栄えは、大いに期待出来るものでしょう。

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■ 物 語 ■

 大正初期 − 上海の裏町で陰謀家の手から、蒙古正統の王女トクーズ姫を、単身で奪還して日本へ連れ去った不敵な男があった。彼こそは、海軍少尉から若親分に転身、さらに軍服姿で鎮守府に血の雨を降らせ、大陸へ亡命していた快男児南条武である。

 彼は姫が蒙古独立の美名のもとに、帝国陸軍過激派に利用され、東洋平和の乱されることを恐れ、姫を東京にある憂国の士木島剛の許に預けた。木島は身にかえても姫を守ると約し、武に自分の後継者の地位を与えようとしたが、遊侠の道に生きる覚悟の武は、その栄誉を固辞して、横浜の親分高遠弥之助の客分として一時身をおくようになった。

 弥之助は武の亡父の弟分に当り、いまは解散した南条組の生残り仙之助も高遠組の世話になっていた。弥之助は武を土地の親分衆一統の前で披露したが、その席上で事ごとに古い仕来りに反抗する新興やくざ猪之原は、かねて想いをかけていた芸者喜久松を暴力でものにしようとするところを、武にさまたげられた。喜久松は武の男っぷりに惚れ、再会を約して別れた。

 当時横浜では猪之助が総会荒しと株の買占めで、物産会社や海運会社の乗っ取りを策していたが、背後には阿片密輸や利権拡大を計る外国商社のビクトルが糸を引いており、また満蒙の独立革命を企む陸軍の過激派が、密輸に協力する代償として、武器兵力を大陸へ送る船舶利用を密約しているのだった。

 武は弥之助と共に木島に呼ばれ、猪之原の朝日海運乗取りを防ぐように依頼され、一旦はやくざ同志の喧嘩になることを恐れて断ったが、木島からその裏面に流れる重大な事情を知ると、改めて快諾した。

 その夜、猪之原一家は突如高遠組へ乗り込み、矢庭に弥之助に拳銃をつきつけて、朝日海運の一件から手を引けと迫った。だが武は大胆にも猪之原の拳銃を奪い、この件はやくざらしく札の一発勝負で行こうと提案、猪之原の得意なトランプの勝負に応じた。そして猪之原の巧妙なイカサマの裏をかいて、文句なしの見事な勝ちっぷりで、彼らの度肝を抜いた。

 当時横浜で港新報という新聞を発行していた山本健は、妹早苗の協力を得て、連日の紙面で阿片密輸、会社荒し、やくざの害毒に対して論陣を張り、猪之原一味の度重なるいやがらせにも屈せず不正と闘っていた。早苗は昼間を救世軍で奉仕、夜は活字拾いを手伝うけなげな乙女である。山本がやくざを善悪ともに一からげにして排撃することに対して、高遠組の虎松ら若い者が憤慨するのをおさえた武は、ある日山本を訪れ激励の言葉を与えた。そして、新聞社をぶちこわしに来た猪之原の乱暴者を虎松と二人で撃退してやったが、やくざを憎む山本の心は解けなかった。

 一方、大陸の革命を急ぐ過激派将校川上中佐、熊田大尉らは、ついに非常手段に訴え、木島を襲って斬り、邸宅を家探ししたが、姫の姿は見当らなかった。木島の臨終に駆けつけた武は、木島から別荘にかくまった姫を海軍の手でアメリカに亡命させること、日本を外国の食い物にさせるなという遺言を受けた。

 怒りに燃えた武は、旧友竹村海軍少佐の軍服を着用し、車で連隊本部へ乗りつけ、川上熊田らの将校たちに、熱涙と共に彼らの国を誤る行動の非を訴えた。それでも武を斬ろうといきる熊田に、「無頼漢には無頼漢としての挨拶がある」といきなり背の刺青を見せ、その痛烈な啖呵は川上らを反省させるものがあった。やがて、トクーズ姫を海軍の船で渡米させた武は、一夜行倒れの阿片中毒者を発見、来合せた早苗と共に港新報へかつぎ込んだが、山本の連絡によって横浜の阿片窟は一斉手入れを受け、猪之原の悪の資金源は壊滅した。

 年の瀬も迫ったある雪の夜、武は弥之助と共に料亭で酒をくみ交わし、いつかの約束で呼んだ喜久松の弾き語りに耳を傾けたが、一足先に帰った弥之助は待ち伏せていた猪之原一味から武と間違えられて、めった斬りにされた。

 弥之助の遺骸の前で、猪之原へなぐりこみだといきりたつ高遠一家を抑えた同業の長老格門前忠太郎は、弥之助の葬式をすませてからでも仇討は遅くないといさめた。だが、すべては自分の責任と痛感した武は、ひそかに仙之助を呼んで、猪之原への喧嘩状を届けさせた。彼は高遠一家の手をかりず、あくまで自分一人で決着をつける覚悟だった。

 決闘の場所へ急ぐ武は、途中で会った山本から、すでに弥之助殺しの証拠が集まった猪之原は法の裁きにまかせ、無意味な命のやりとりはよせと忠告されたが、武は「やくざはやくざのおとしまえがある」と振り切って行く。さらに救世軍のパレードに加わっていた早苗にもそれとなく別れをつげた武は、雪のふりしきる夜の大桟橋で手ぐすね引いて待つ猪之原一家に奇襲を加えた。海軍流の痛烈な各個撃破戦法で、激闘また激闘、自らも傷を負いながらも、ついにめざす猪之原を海中へ斬って落した。

 救世軍のブラスバンドのひびく雪の街を行く武の姿はやがて、雪に消えていった。(公開当時のプレスシートより)  

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詳細は、シリーズ映画「若親分シリーズ」参照。

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