華岡青洲の妻ゆかりの地を

《華岡青洲の妻》に取組む若尾・雷蔵・高峰が訪れて

 有吉佐和子原作のベストセラー「華岡青洲の妻」の撮影を前にして、主演の市川雷蔵・若尾文子・高峰秀子の三俳優は、物語の舞台、和歌山県那賀郡那賀町本山にある“青洲ゆかりの地”をたずねました。

 住居跡や墓地、和歌山医大に残されている青洲資料室で、当時の手術器具、往診カゴ、書籍類、衣服などを見学した一行は、個々細かく質問をぶつけ、真剣なまなざしをそそいで、熱っい役づくりに専念するのでした。

  和歌山市内から車で四十分位の那賀町本山には、いたる所に世界で初めての麻酔手術に成功した医師華岡青洲の偉業をたたえる遺跡がある。応神山の中腹あたりには、青洲記念碑、土蔵、墓地、名手本陣には、その妻加恵の生家が約二百年の歴史を物語るように古く色あせてたっていた。

 今、青洲の住居跡には六代目の華岡雄太郎氏が昭和十三年にたてた記念碑が立っているだけで一千坪もあった敷き地には別の家が何軒もたち、わずかに紫蔵が残っている。一族の墓地は、タメ池の様なかんがい用水の池のわきにあるこんもりした森の中だが、やはり青洲の墓が一番大きく、その後ろに妻の加恵、さらにうしろに傾いたままになっている母の於継の墓がコケむしている。

 この地を訪れたことを三人は大いに喜こび雷蔵も「だんだん青洲の心がつかめそうだ」と語り、若尾も高峰も「嫁と姑の立場と云うものは、女の美しい世界の一つだろうと思う」と三人三様の役作りも完成した様である。