幸わせ

 加恵は三年間、夫のいない結婚生活を送る。雲平の学資のために機を織り、時には姑とならんで薬草畠の草をむしる。於継の加恵を見る眼はやさしい。夫はいないが、加恵は幸わせだった。

帰 郷

 雨の降りつづく日、雲平が帰った。その夜からやさしい姑は一変して、修羅となるのだった。

西洋医術

 青洲はカスパル流の外科学を学んできた。オランダ式の手術道具一式を持ち帰り、父直道の南蛮流外科と活用して、中国の医聖・華陀たらんとの意気に燃えていた。

 彼は手術のために麻酔薬の研究に没頭し、朝鮮朝顔(気違い茄子、曼荼羅華)を使って動物実験をはじめた。患者を薬で眠らせ、うめき声一つ立たせずに手術できたら - 彼の夢は大きく果てしなかった。