第二回公演に際して

                                       武智鉄二

 昨年十二月、大阪松竹の全面的好意によって、関西実験劇場公演として、歌舞伎の再検討を標榜して、若手歌舞伎の第一回公演を行いましたところ、好劇家の非常な御支持を得た上、出演俳優諸君の熱演と相俟って、同公演を無事終了出来ましたことは、私の大きい喜びでありました。これに力を得て、私はこんど第二回として、又も若手歌舞伎を動員して、再び歌舞伎公演を試みようとしています。出演者は前回と同じく、関西歌舞伎界の若手、実川延二郎、坂東鶴之助らに「つくし会」の人々を起用し、上演狂言も、いろいろ詮衡の結果「妹背山道行」「俊寛」「勧進帳」の三つをとりあげました。「妹背山道行」は京舞井上流の家元四代目井上八千代師を煩わして指導をお願いし、「俊寛」は竹本綱太夫、竹沢弥七両師の指導を仰ぎ、「勧進帳」は能楽方面の御協力により本行演出を考慮するなど三つとも従来の演出に新しい研究を加えております。歌舞伎の表現技術面に於ける一飛躍を意図しました。

 原則として原作第一主義をとることは勿論、封建的身分から割り出された俳優中心主義の仕勝手を整理し、いろいろ伝えられる型を検討して、適宜に取捨選択していることは、前回と同じ方針でありますが、協同演出者にひきつづいて坂東蓑助君を得たことは、何といっても私の強味で、このよき相手と共に、この演出意図を成功させたいと思っています。出演青年俳優諸君が、前回以上の努力と熱意により、更によい結果を見せてくれるであろうことを確信しています。と同時に、汎ねく好劇家に是非御鑑賞を乞い、そのきびしい御高評をうあかがいたいと期待いたしております。

再び協同演出について

                                       坂東蓑助

 こんどまた武智鉄二君んお仕事のお手伝いすることになりました。

 前回の実験劇場の歌舞伎公演の時と同じく、文楽座で、前と同じ顔ぶれで第二回の歌舞伎公演をやることになり、約一ヵ月間毎日はげしい稽古に張り切りました。前回に「熊谷陣屋」や「野崎村」を演り、相当好劇家の間に論議されましたようですが、今回も歌舞伎の再検討を目標として「妹背山道行」「俊寛」「勧進帳」の三つをもって世に問うことになったのですが、相手が凝り屋の武智君のこととて、二人があれこれと研究しただけに好劇家の間に必ずや問題になることでしょう。

 若い次代の歌舞伎界を背負う人たちが毎日はげしい稽古をつづけているのを見ますと、われわれの若い同じ年頃のことと思いくらべて羨ましくなります。因習的なこの世界、何一つ変ったことを演るのを許されない封建的な芝居生活に、新らしい意図の新演出の下に、存分腕を揮えるわけですから若い連中は大喜びです。どんな出来を見せてくれますことか、大いに楽しみにしております。