こんどまた武智鉄二君んお仕事のお手伝いすることになりました。
前回の実験劇場の歌舞伎公演の時と同じく、文楽座で、前と同じ顔ぶれで第二回の歌舞伎公演をやることになり、約一ヵ月間毎日はげしい稽古に張り切りました。前回に「熊谷陣屋」や「野崎村」を演り、相当好劇家の間に論議されましたようですが、今回も歌舞伎の再検討を目標として「妹背山道行」「俊寛」「勧進帳」の三つをもって世に問うことになったのですが、相手が凝り屋の武智君のこととて、二人があれこれと研究しただけに好劇家の間に必ずや問題になることでしょう。
若い次代の歌舞伎界を背負う人たちが毎日はげしい稽古をつづけているのを見ますと、われわれの若い同じ年頃のことと思いくらべて羨ましくなります。因習的なこの世界、何一つ変ったことを演るのを許されない封建的な芝居生活に、新らしい意図の新演出の下に、存分腕を揮えるわけですから若い連中は大喜びです。どんな出来を見せてくれますことか、大いに楽しみにしております。 |