昭和二十八年
中座の東西合同大歌舞伎
四月は、珍しく中座に仁左衛門一座ならぬ関西歌舞伎がかかっている。鴈治郎を中心とする中芝居だが、始めは鴈治郎一座の結成と思われていただけに、純上方芝居を期待していたが、結局は訥子・富十郎・新之助を加えたので、東西合同とやらの形になってしまった。
【摂州合邦辻】 安居庵室の場
訥子の修行者合邦、鴈治郎の高安後妻玉手御前の息があって佳良である。鴈治郎もこういう女形になると、いかにもその形のよさが目に付く。雷蔵の高安俊徳丸が立派にこの一座の中で見劣りのしないところまで成長したのには驚かされた。息女浅香姫に上村吉弥を抜擢したのも賛成で、その演技はまだ十分ではないが、台詞とマスクの美しさは大いに楽しめる存在になろう。新之助の合邦女房おとくも案外の上出来だった。
【生玉心中】 二幕
たしかに今月の収穫の一つ。鴈治郎の一ツ屋嘉平次はさすがに上方の味である。富十郎の柏屋おさが、成太郎の嘉平次姉おさんなど、いずれも佳作の中に、ここでも雷蔵の嘉平次弟幾松が目に止まった。
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