ぼんち
山崎 豊子 原作
大阪新歌舞伎座公演
大阪の船場、西横堀の足袋問屋河内屋は四代続いた老舗でした。その河内屋に、はじめて跡とり息子の喜久治(雷蔵)が生まれました。
喜久治は河内屋はじまって以来の嫁を迎えました。河内屋の若御寮はんとなった弘子(阿部揚子)は男の子を生むと、祖母のきの(英太郎)や勢以に家風にあわぬといって離縁されました。
ぼんぼん育ちの喜久治は、こん四代にわたって河内屋を支配している女の血統に勝てませんでした。喜久治は、弘子にいいました。
「わいな・・・もう一生、嫁は持たへん、・・・わいの嫁は弘子ひとりや」
それから、喜久治の茶屋遊びが目立つようになりました。二年経ちました。喜久治は新町の芸者ぽん太(淡島千景)を妾にしました。
父親の喜兵衛(寿美蔵)が喀血して病の床につき「ただのぼんぼんではあかん、気根性のあるぼんちになってや、男にだまされても、女にだまされたらあかんで・・・」と喜久治にいい残して息をひきとりました。そのとき、喜久治は、父の看病に、父の愛人君香(緋桜陽子)そそばに置かせました。
喜久治は河内屋ののれんを継ぎました。そして、遊びも益々派手になりましたが、商いはおろそかにしませんでした。
女も、ぽん太のほかに、新町の富乃家の養女だった幾子(千葉明生)、宗右衛門町の浜ゆうの仲居頭お福(霧立のぼる)、道頓堀のカフェ赤玉の女給比紗子(渡辺千世)、南の舞妓小りん(桜緋紗子)と増えていました。
それから、戦争 − 。
戦争の被害は喜久治の上にもふりかかって来ました。あの女の血統で守り続けて来た河内屋の蔵や大黒柱も、戦災で一瞬にくずれてしまいました。たった一つ残った商い蔵で、喜久治は女たちを前にして、いままで放蕩の限りをつくした人生の帳尻を合わすときが来たと決心をしました。
船場のぼんち、喜久治の肩に四代続いた老舗ののれんが継がされました。
@家庭にあわぬと弘子を離縁させられた喜久治は、茶屋遊びに通いました。そこで、父の女・君香を知ったのでした。
A新町のお茶屋で雑魚寝をしている喜久治は、隣りのぽん太を抱き、別室へと消えて行きました。ぽん太は心躍らせ・・・。
B父の喜兵衛は喀血して、とうとうそれっきり息をひきとりました。病床のすそに君香がひっそりといました・・・。
C女遊びも益々派手になった喜久治に、ばったり会ったぽん太は、贈られた包みをいやがらせに捨てようとしました。
D喜久治はハッとしました。女のこと、河内屋の商売のこと、喜久治の頭にはめまぐるしい想いがめぐります。
E戦争は、この四代続いたのれんをもひきちぎろうとしていました。喜久治には心に決するものがありました。
F幾つもあった蔵や大黒柱は、無残に焼けくずれてしまいました。それは女の血統で持ちこたえた河内屋でしたが・・・
G放蕩の限りをつくした喜久治でしたが、この焼け跡に立ったとき、人生の帳尻をあわすときが来たと思いました。
|