大阪新歌舞伎座

九月 特別公演

 寿海の参加での雷蔵中心の公演です。朝丘雪路、藤間紫、 柳永二郎、それに歌舞伎から訥升、菊次郎、おまけに日本歌劇団という、いってみれば混成軍で昼夜二本づつの狂言立て。<眠狂四郎>や新作<切られの与三郎>と、有名度の高いものを並べたところは、いかにも大阪らしい商売の巧さを感じさせます。

 雷蔵は元々が関西歌舞伎の出身ですから舞台の安定度の高いのは当然というもので、しかも二度目の公演だけに貫禄も十分です。

 脇役陣も充実していますが、どちらかというと夜の<獄門帖>と<切られの与三郎>の方が芝居の見巧者にはコクがあったと評判がよかったようです。寿海が相変らず若々しい舞台をみせて健在ぶりを示し、この親子劇はまずまずの成功を収めていたようなのは何よりでした。

 泉州高師浜に移ってから殆どその本宅に住むことのなかった延若が引払って東京に本宅を構えたので、歌舞伎人の大阪在住は吉三郎、霞仙、璃珏、寿美蔵、成太郎ら脇役ばかりになり、主な寿海、仁左衛門、鴈次郎、菊次郎らは京都住いで、実体はないことになってしまった。関西だけの総帥でなく、歌舞伎最高の存在である寿海が大阪に殆ど出ることがないのを、年に一度だけ顔を見る機会が九月にやっと雷蔵の実演のおかげで持てたというのも皮肉なことである。

 そんな意味で、雷蔵は自分の育った大阪の芝居へ御恩返しをしているともいえる。遠い将来であろうとも、いづれは舞台へ帰る気を失っていないための勉強でもあるわけだが、去年に続く“特別興行”を、毎年の軌道にのせてもらいたいものだ。