蝶次と蝶十郎の顔合せで。小田原の芝居小屋は大変な大入りである。舞台では蝶十郎の長兵衛、蝶次の権八で「鈴ケ森」が上演されている。白熱の舞台に見物はやんやの声援を送る。所が、どこからかかぎつけたのか、橋場一家の身内が小田原まで追いかけて来た。ようやく「鈴ケ森」の舞台は無事幕となったが、橋場一家の若い衆がどやどやと舞台へ上ってくる。芝居の裏手に待ちかまえた蝶次は片っぱしからたたき伏せる。腕のたつ蝶次の敵ではなかった。

 そこへ、お絹が旅仕度で駈けて来た。蝶十郎にゆるされて蝶次と二人旅に出るのだ。嬉しそうに手を取り合って行く二人に声をかける蝶十郎、その後には蝶次への思いをこがしながらお絹にゆずったお駒がさびしげに立っている。