下市釣瓶鮨屋の場

 
 

主な登場人物

主人公: いがみの権太
弥左衛門: 権太の父
弥助: 実は三位中将惟盛
若葉内侍: 維盛の御台所
六代: 維盛の一子
お里: 弥左衛門の娘
お米: 弥左衛門の妻
小せん: 権太の妻

 ◆かいせつ

 歌舞伎三大名作の一つとして有名な「義経千本桜」のなかでも“すし屋”は、いがみの権太と呼ばれるならず者が迎える悲劇の結末に、親子の情と悲哀を感じる作品です。お里の口説き、すし桶を構えた権太の引込み、そして権太が本心を明かす“モドリ”といわれる趣向など、みどころあふれる作品です。

 五段続きの演目で、永享4(1747)年11月、大坂竹本座にて初演。二代目竹田出雲・三好松落・並木千柳の合作。「大物船矢倉/吉野花矢倉」(だうもつのふなやぐら/よしののはなやぐら)の角書きが付く。通称「千本桜」。源平合戦後の源義経の都落ちをきっかけに、実は生き延びていた平家の武将たちとそれに巻き込まれた者たちの悲劇を描く。

あらすじ 

 下市村の釣瓶すし屋を営む弥左衛門は、その昔、助けてもらった平重盛への旧恩から、その子息の維盛を使用人の弥助として匿っている。その弥左衛門の家に、今は勘当の身の上のいがみの権太が、母のおくらを騙して金を手に入れようと現れる。

 一方、弥助に恋していた弥左衛門の娘のお里は、ある晩一夜の宿を借りようと訪ねてきた親子が維盛の御台所若葉の内侍と、一子六代である事実を知り三人を逃がす。しかし、弥助の素性を知った権太が褒美目当てに訴人しようと駆け出していくところへ、維盛詮議に梶原景時がやってくる。権太は、持参した維盛の首と縄にかけた内侍親子を突き出す。その所業に怒った弥左衛門が思わず権太を刺すが、苦しい息のなか権太が明かす真実とは…。